村上佳菜子選手が引退 ほろ苦い現役生活だったが、今後はフィギュアスケート王国・名古屋の伝統を継ぐコーチに! 

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 国別対抗戦の最終日に、村上佳菜子選手が引退を表明した。とうとう…という思いだ。今後はプロスケーターとして活躍するとともに、コーチ業修行を始めるそうだ。

 シニアデビューは2010年10月、名古屋で開催されたNHK杯だった。15歳だった。ショートプログラムは「ジャンピン・ジャック」(演奏:ビッグ・バッド・ブードゥー・ダディー)、振付は山田満知子・樋口美穂子。元気で明るい人が出てきたなあという強い印象に残った演技だった。
 このとき、カロリーナ・コストナー、レイチェル・フラットについで3位に入った。



0:43 始まる はじける笑顔、キレのある動き
1:08 3T3T
1:28 3F
1:33 レイバックスピン
1:59 2A
2:09 ここからが、かわいい…
3:36 最後のポーズ
4:08 転倒?!
4:19 樋口美穂子コーチ登場
6:13 山田満知子コーチと樋口美穂子コーチと3人、今思えばすごい

 村上佳菜子選手は、はつらつとしていて、動きに独特な魅力があり、ジャンプも迫力があり、どれだけ伸びるだろうかと思われた。身体能力からいえば、村上選手に羽生選手のようにめらめらと燃える野心があったなら、いまごろは日本女子のリーダーになっていたのではないかと思われる。
 でも、そのころから、トップに立ちたいというような欲がない人で、将来は先生になりたい…ということだった。そして、これからは本当に先生になる道へと進むそうだ。山田コーチから樋口コーチへと続いた名古屋のスケートの伝統を継ぐコーチとしては、能力的にも性格的にも経験的にも、最適任ではないかと思う。選手生命は短いが、これから、何十年とコーチ業は続けられる。村上選手をキスアンドクライで見ることができる日はいつごろだろうか!

 びっくりするような、すばらしい能力がある選手はたくさんでてくる。でも、それを世界で開花させることは、極端に難しいのだと最近わかってきた。練習量だけではなく、家族の助けや、コーチや振付師やプログラムや、本人の思いの強さや周りの状況や、その時の運などが複雑にからみあった結果が、競技の結果につながる。
 例えば、このNHK杯では、浅田真央さんは佐藤信夫コーチのもとでジャンプの見直しを始めたところで8位だった。そこから積み上げてきたありとあらゆるものの総力戦の結果として、ソチのフリーの演技があった。そこまでの厳しいものなのだ。

 他にもいろいろなドラマがフィギュアスケートにはある。それらをつぶさに見てきた村上選手だからこそ、村上コーチへの期待は高まる。最近、織田信成さんが関西大学フィギュアスケート部の監督に就任したが、ぜひとも、村上選手には、いつか中京大学フィギュアスケート部の監督に。

 昨年の全日本選手権の演技も感動した。「星は光りぬ」(歌劇『トスカ』より、作曲:ジャコモ・プッチーニ)、振付は樋口美穂子。22歳、9回目の全日本選手権だ。



0:31 始まる
1:02 3F
1:09 2A
1:41 3T2T
2:37 3S2Lo2Lo
3:28 3T
3:42 3S2T
3:49 2A
3:56 このあたりからのステップ!
4:46 すべての力を使い果たしたかのようにうずくまり、立ち上がる
5:00 涙、そして、樋口コーチの涙
6:44 会場から大きな手拍子が起こる
7:18 高橋大輔さんのコメント「この表情が見たかったですね、感動して泣いてしまって、言葉が見つかりません」

 ずっと回転不足に深刻に悩まされてきたが、ジャンプ構成を変えて、回転不足は一つだけにおさえた。フリーでは7位につけて、全体では8位だった。しかし、おそらく、見るものに与えた感動は1位だったのではないかと思われた。

 競技結果は、感動とは別のところにある。フィギュアスケートに限らず、スポーツの厳しさと感動は、そこにあるのかもしれない。


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# by tarukosatoko | 2017-04-27 13:13 | フィギュアスケート | Comments(0)

室生寺(奈良県宇陀市) 山深い祈りの地 まじで大変だった先人たちを思う

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 奈良県宇陀郡の室生寺は、山深い不便な場所にあるからなのか、派手なところもないからなのか、外国人観光客がほぼいなかった。シャクナゲがきれいなことで有名なお寺だ。シャクナゲはまだつぼみが多かったが、清浄な気配漂う境内の急な石段を登っていると、何か大事なことを思い出したような、なつかしい気持ちになった。

 このお寺の仏像は、どれもとても豊かな表情をしているように感じた。中心の仏像の前に少し小さめの仏像が12並んでいたのだが、いろいろなポーズをとっていて、まるでまるで、フィギュアスケーターたちが並んでいるような、みごとな躍動感があった。
 堂内の仏像の撮影は禁止なので、ホームページのリンクを。





 そして、参道の傍らに並ぶ、小さな石仏が、表情が豊かで、親しみを感じた。

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目を閉じて、無駄な力が入っていない、穏やかな様子



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耳が長い、含み笑い



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これは…何か渋いものでも食べてしまったかのような…



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マイペースにゆったりと



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むむむ…



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達観しているご様子で、手がいっぱい


 この石仏を通り過ぎて、まだまだ行くと、目の前に「もう、上に行くのはやめて、帰ろうかな…」と思うような大量の石段が現れる。汗をかいて、かなりがんばって登ると、奥の院に到着する。

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 奥の院は、ちょうど清水寺のようなやぐらに木材を組んだ上に建っていて、下のほうを見渡すことができる。汗をかいたので、ひんやりした風が心地いい。最高に気持ちがいい。

 ここのところ、家族が高熱をだしたり、また別の家族も体調を崩したり、また別の家族は…、自分は花粉などで頭痛がしたり、仕事内容に新しいことが加わって、毎日、夢の中でまで仕事に没頭していたり…、大きなことを言えば、世界ではミサイルがとびかって、空爆で生活が破壊されたり、日本でも…、いろんなことがあって、大小の、自分の手に追えないことが少なくない。それを真面目に受けとるたちだ。

 心地よさ100パーセントのこの場所にいると、

「まじで疲れた!という思いが、ふつふつとわいてきた。
「もう、帰りたくない!」と思った。

 しかし、当然だが、帰ってきた。バス道を通って寺に入るときに、朱色の欄干の橋を渡った。帰りにその橋を渡りながら、この橋がお寺と人が生きていく現世をつなぐ橋なのだなと感じた。自分は自分の場所に帰って、また、こまごまと動いて生きていくしかない。
 それにゲームと同じように…、人は経験値があがるものなので、どんどんタフになっているのだが。


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 山と渓谷に囲まれたこの地は、太古の火山活動によってできた室生火山帯の中心部だったのだそうだ。この穏やかな土地が火山だったとは!
 奈良時代末期に皇太子の山辺親王の病気平癒の祈願がこの地で行われ、卓効があったことから、国家のために建立されたという歴史を持つ。

 女人禁制だった高野山に対して、女性の済度をもはかる真言の道場として女性の参詣を許したことから“女人高野”と呼ばれてきた。

 はるか昔から、いろんな女人が、いろんな思いを抱いて、参詣したのだろう。まじで疲れた女性もいれば、それどころではなく、まじで深刻な女性も少なくなかったのではないかと思う。古来から、女性たちは、何を思って、室生寺の階段を歩いたのだろうか。そんな先人たちにも思いをはせた室生寺での一日でした…。






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# by tarukosatoko | 2017-04-26 00:30 | 番外編 | Comments(2)

4回転最強グループの陰で、静かに力を伸ばすミハエル・コリャダとジェイソン・ブラウン 来期こそは!

 昨シーズンから、静かに静かに、ロシアのミハエル・コリャダは世界の舞台に自らの位置を作り出してきた。国別対抗戦でもいい演技をして、最高の笑顔をみせてくれた。コリャダの笑顔を見ると、とてもうれしい!ヌーパガシーもシルクドソレイユも大好きなプログラムだ。というか、コリャダが滑るなら、なんでも好きかもしれない!

 国別対抗戦では、羽生、宇野、パトリック、ネイサン、ボーヤンの4回転最強グループのすぐ下に、ジェイソン・ブラウンとともに、ぴたっとつけている印象がある。

 ジェイソン・ブラウンが4回転ト―ループをマスターしたなら、最強グループを脅かすことはまちがいないし、ミハエル・コリャダが4回転ルッツをマスターしたなら、どんなことになるだろうかっ!
 ぜひとも、二人がそれぞれの新しい4回転を手に来シーズンを過ごしてくれることを願う。
 とはいえ、4回転ジャンプがなくても、十分に素晴らしいから、試合でなければ、4回転がなくてもいいのだか…

 これまで、要素の出来映えを見るくらいで、ろくにプロトコルを見ていなかったが、国別対抗戦での演技構成点をざっと見て、今の男子の並びがよーくわかった。国別対抗戦はカジュアルなところがあるので、世界選手権とは違っているかもしれないが…それはまた、見てみることにする。

 パトリック、羽生、宇野、ブラウンが9点台で、ネイサン、ボーヤン、コリャダが8点台だ。ボーヤンが健闘している。そして、いつの間にか、なのか、前からなのか、コリャダも8点台になっていた!

 まったく! ブログで誰のことを書いたらいいのか、迷って書けないくらい、どの選手も素晴らしい!しかし、まずは、コリャダの国別対抗戦でのフリーの動画をさがすつもりだ。

 主観的には、コミカルなものが好きなので、ボーヤンのプログラムも大好きだ!

 男気の羽生は全力で駆け抜けているし、宇野選手の情感は天性のものとしか思えない。ネイサンは動きがバレエで格調高くて憧れる。気品のあるパトリックはフィギュアスケートの最高峰にあり、きれいな音楽を瑞々しく体現しているし、ジャンプで転倒しても、ぜんぜん、ノープロブレムノープロブレム!と思うくらい完成されている。
 そして、ブラウン選手は演技も笑顔も、人を包み込むような優しさで、わたしが20歳でアメリカ人だったら「結婚してください💕」と言いたいくらいだ。


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# by tarukosatoko | 2017-04-21 22:31 | フィギュアスケート | Comments(4)

ニュアンスのあるスケーター、アルトゥール・ガチンスキーが現役に復帰

 プルシェンコではなく…、ロシアのアルトゥール・ガチンスキーが現役に復帰するようだ。怪我の具合がよくなったのだろう!
 現役の最後はタチアナ・タラソワの門下だったが、再び、ミーシンコーチのもとに戻るようだ。昨シーズンに引退を表明していたのだが、まだ23歳だ。羽生選手や、たぶん、ジェイソン・ブラウンとジュニア時代にたたかってきた選手だ。

 アニメ『ユーリonICE』のユーリ・プリセツカヤを見て、ガチンスキーを思い出した人も多いのではないだろうか。

 プルシェンコと同じリンクで同じコーチで練習して、プルシェンコ2世と呼ばれてきた。ジャンプはプルシェンコとそっくりだったが、タイプは違った。他のロシア選手とはまた違う、ニュアンスのある暗めな雰囲気がある素敵な選手だ。

 これからどの試合に出場するだろうか?!ロシアの五輪出場枠は2枠。コリャダやコフトンは危機感を持っているだろうか。ボロノフだっている!

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# by tarukosatoko | 2017-04-21 16:03 | フィギュアスケート | Comments(2)

『羽生結弦 王者のメソッド2008-2016』(野口美恵・著) 「とにかくすべてのジャンプを難しさの限界ギリギリにしたい」 2011年「ツィゴイネルワイゼン」も

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 昨日は国別対抗戦の男女ショートプログラムがあった。羽生選手が冒頭の4回転ジャンプを回りそこなったときには、見ていて、非常に焦った。演技を見ながら、「これは悔しがるだろう、ものすごく、最大に悔しがるだろう…」という予感が。そして、試合後の悔しがり方は半端ではなかった。夜、寝られなくなるような悔しがり方だった。これだけ、悔しがることができるものを持っていることがうらやましいような、悔しがり方だった。

 羽生結弦の最後のプリンスのショートはノーミスを達成できなかったが、羽生選手もいつのまにか、濃い味のあるベテランスケーターになったなあと、ちょっと感動した。演技前の力が入りすぎて周りが近寄れないような張りつめすぎた空気も、演技後の悔しさがにじみすぎて周りが戸惑うような雰囲気も、フィギュアスケートファンには、なじみ深いものと感じられるようになった。

 いつも、どの試合でも、周りがあっけに取られるほどの全力で演技に取り組む様子は、やはり、ただものではないと感じる。羽生結弦はただのイケメンスケーターではなくて、すごい点数を出すだけのスケーターでもなくて、そしてまた、ただの優等生なだけでもなくて、非常に自我の強い、安易に空気を読んだりもしない、陰と陽をあわせもった個性の強い人間なのだということが見えてきた。

 羽生選手が以前、何かのインタビューに答えて、言葉が不正確になるが、引退後は金メダルの伝道師になりたいというようなことを話したことを読んだ。『羽生結弦 王者のメソッド2008-2016』(野口美恵・著)を読んで、伝道師になれるかもしれないなと思った。

 クリケットクラブのような、個々の能力が優れた人材を集めて、全体で完全になるようなチームを組んだら、羽生選手がそのクラブの頭脳となって運営すれば、選手の力を最大限に効果的に引き出して、金メダリストを生んでいけるかもしれない。日本の伝統にはない新しい流れだ。


「負けることは悔しいということ。悔しいのが嫌なら、練習が大事だということ。悔しさが練習につながっていくんだ」

「(試合結果を分析して)後半、落ち着いていれば挽回できるような、小さなミスが勝敗を分けていたことに気づくと悔しさは倍増した」

「悔しさが大きすぎて冷静さを欠く」「貪欲さと冷静さ、片方だけでは勝てない。相反する二つの心のバランスの難しさを知った瞬間だった」「途中のステップではねんざした足が思うように動かず転倒するが、すぐに立ち上がった。〈コケた分、しっかり休んだと思おう〉」

「(バトルと「パリの散歩道」を振付したときに)僕はトリプルアクセルが得意だから、後半の得点が1.1倍になるところで跳びたい。あと、4回転トーループもステップから跳びたい。とにかくすべてのジャンプを難しさの限界ギリギリにしたい」

「自信があるないかは重要ではない。自信なんて言っていると、試合前に急に不安になった時になにも出来なくなる。ただ全力を出すと考えればよい」

「僕は去年と同じ自分ではいたくない」

「僕は心の中で『フリーで200点越えしたい』『合計で300点越えしたい』『ノーミスしたい』って思っている。このすべてが、見えないプレッシャーとして降りかかることだし、演技の一つ一つに集中できなくなる条件じゃないか!自分は結果への見えない欲が出ているんだ。結果を期待しているから緊張している。そのすべてを認めよう」


 とことんまで納得できる答えが出るまで考える、ことが羽生選手の能力の一つでもあるのだろう。試合後のインタビューでも心の自問自答をインタビューに答える形で声に出してしゃべり、話している中からうまく行かなかった原因を見つけだす。考えた結果を演技に反映させる。独特のスタイルだ。

 羽生選手が最初にシニアの試合に出たのは、2010年のNHK杯だ。少女漫画に出てくる男子そのものだと思ったのだが、演技直前に、その容姿とは雰囲気が違う、激しく鋭い表情になった。「えっ」と思った。この本を読むと、このときに羽生選手が何を思っていたかがわかる。シニアデビューのこの時点ですでに「これからのオリンピックで金メダルを2回、二連覇してやる!」と強く強く思っていたのだ…

 でも、演技後はまた、むしろ少女のような無邪気な笑顔になった。いろんな面を持った人だという印象だった。

 動画はシニアに初参戦したシーズンの2011年4大陸選手権のフリーだ。「ツィゴイネルワイゼン」(作曲:パブロ・デ・サラサーテ、振付:阿部奈々美)。高橋大輔についで2位になり、世界に羽生選手の存在を示した大会だった。



0:50 始まる
1:08 4T ジャンプに向かう軌道のダイナミックさ、ふわりと風に乗る感じの4回転ジャンプ
1:25 3A
1:48 きれいなスピン
3:24 3A+3T きれい

 4回転へ向かうときの動きがきれいで、このように動けば4回転がとべるのかと、このときに見ていて思った。トリプルアクセルもものすごくきれいで大きい。しかし、全体の印象がまるで違う。今は、なんとうまくなったのだろうかと感嘆する。

 でも、おそらく、羽生選手は、細かい動きなどで、さらにもっとうまくなる余地があるように思う。ケガをしないで、これからのフリーも、来シーズンも、最高のところまで到達することを祈る。

 しかし、国別対抗戦ですごかったのは、ジェイソン・ブラウンだ。4回転なくして、94.32という得点だった!その得点にふさわしい、大きくてダイナミックで繊細で細部にまで行き届いた、宝石のような演技だった。
 ブラウン選手は練習ではきれいな4回転ト―ループを着氷できている。来シーズンも4回転ができないというわけではない。そのブラウン選手の今回のフリーも楽しみだ!





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# by tarukosatoko | 2017-04-21 08:46 | フィギュアスケート | Comments(0)

本をペラペラ読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートや映画、生活雑記もあり。


by タルコフスカヤ・さとこ
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