
ロシアのGPSロステレコム杯は、とぎれとぎれではあるが、アイスダンスやペアも見た。もちろん男女シングルも見た。そのほとんどが、タチアナ・タラソワの解説付きだった。
タラソワが振り付けたプログラムを見ていると、とても大きな何かにふれることができた気がする。タラソワは発言内容も常に聞く人に印象を残す。タラソワに関する記事を見つけたら、必ず読むし、必ず、読んだ満足感を得ることができる。
しかし、タラソワ、こんなにしゃべる人だったのか!!競技の間中、しゃべり続けておられた。ちょっと黙って演技をみませんか、と感じることもあった。昨日は、寝るときも、タラソワの声がぐるぐると聞こえてくるような、それくらい、大量のタラソワの声を聞いた。
タラソワの解説。ここぞというときに最高のタイミングで大きな歓声をあげる。そして、ぼそぼそと本音をつぶやく。後であちこち探して主に岩信祐理さんのツイッターで読んだのだが、解説者として率直な感想を述べておられたようだ。それは時に、自国選手をほめたたえ、そのライバルを下げているようにも思える。何につけ、浅田真央をからめて、真央ちゃんをほめたたえ、そのライバル選手、といってもロシア人選手以外のライバル選手を下げているようにもとれる。他の日本人選手にも手厳しい。タラソワは、ロシア選手と真央ちゃんが好きということなのだろう…
技術を解説するときの(←たぶん)説得力のある強い声を聞いていると、ロシア語をわかるようになりたいとしみじみ思った。
タラソワの口調、ロシア語がほとんどわからない私には、上沼恵美子的な、〝おばちゃん話術〟の真骨頂のようなものを感じてしまった。短時間なら、その話法はものすごくおもしろいが、数時間はきつい。タラソワが話していないとき(演技内容がいいときが多いように思った)、少しほっとしたりもした。
理想が高いというのは、ストライクゾーンが狭いということなのだと、タラソワの話ぶりを見ていて思った。振付師が、解説とはいえ、演技のいいところをほめてばかりでは、振付という仕事でより高みまで到達することはできない。
あれはだめ、これはできていない、それは魅力的ではない、どうしてできないのかわからない、衣装がへん、曲が信じられない、題名が悪い、おかしくて笑っちゃうわ……云々。(←翻訳は岩信祐理さんのツイッターで読んだ)
感性にあわないもの、心を動かさないものを捨てて、捨てて、捨てて。そして、素晴らしいプログラムが出来上がるのだろう。

↑若き日のタラソワ。1947年2月13日、ソビエト連邦で生まれる。父はアイスホッケーコーチとしてオリンピックで3連覇を果たした「ロシアホッケーの父」アナトルイ・タラソフで、夫はピアニストのウラジミール・クライネフ。 ペアの選手で1965年には世界選手権7位、1966年欧州選手権4位と実績を残す。このとき、ペアスケーターだったアレクセイ・ミーシンとはライバル関係にあったそうだ。小塚崇彦選手のご両親とも、同時代だったそうだ。
19歳のときに怪我で引退し、19歳でコーチになった。タラソワは18歳という若さで、最大の挫折を味わったのかもしれない。その後、多くのスケーターを五輪金メダルや世界王者に導いたので「金メダルメーカー」と呼ばれた。2005年まではアメリカで活動していたが、現在はロシアでロシアスケート連盟の顧問をしている。
バレエ的な芸術性が高いプログラムや複雑で高難度のステップがタラソワの特徴だ。代表作は「リベルタンゴ」(1996-1997オクサナ・グリシュク&エフゲニー・プラトフ)、「ラプソディー・イン・ブルー」(1997-1998イリヤ・クーリック)、「アラビアのロレンス」(1998-1999アレクセイ・ヤグディン)、「白鳥」(2005-2006ジョニー・ウィアー)、「仮面舞踏会」(2009-2010浅田真央)、「前奏曲「鐘」」(2009-2010浅田真央)、「ピアノ協奏曲第2番」(2013-2014浅田真央)など。
数日前、書店にかけつけて買った『Number』890号では、家に帰るのが待てずに、道端で真っ先にタラソワの記事を読んだ!
浅田真央に対する記事の最後にはこうあった。
「いままでやってきた方向性を変える必要はないわ。完全にできているから。いつでも連絡してほしいわ。真央が必要なとき、私を訪ねてきたとき、私はいつでもアドバイスする準備ができています」
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