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『女装して、一年間暮らしてみました。』(クリスチャン・ザイデル著) 異性理解に役立つかも。

『女装して、一年間暮らしてみました。』(クリスチャン・ザイデル著) 異性理解に役立つかも。_e0337786_16260523.jpg
 ドイツの元映画プロデューサーが、女装して一年間暮らしてみた記録。

 著者のクリスチャン・ザイデルは1959年生まれのドイツ人で、テレビ、映画、広告業界、ジャーナリズムの世界で成功をおさめた男性だ。ゲイだとか、女装家ではなくて、妻もいる、女性を愛するほうの男性だ。その著者がなぜ、女装することになったか…。

 著者はもともと、男性用の防寒下着「ももひき」が、室内では暑すぎることに不便を感じていた。そして、ちょうどいい下着が売っていないために、毎年、風邪をひいていた。ある日、寒いのに「ももひき」をはかずに外出した著者は、風邪をひかないために、即座にデパートに下着を買いに行った。

 男性用の下着売り場には、くすんだ色のみすぼらしい「ももひき」しか売っていなかった。その時に、偶然、カラフルで種類が多い、隣の女性用下着売り場が目に入った。躊躇し、たくさんの自問自答のすえに、著者は「妻に頼まれたので」と説明して、女性用のストッキングをまとめ買いした。

 そして、家に帰ってストッキングをはいて外出した著者は、そのあたたかさや、軽やかさに「やさしく、満ち足りた気持ちになった」。

 自分は男らしく生きてきたが、自分の中には女性である自分もいる。男だからという理由で虚勢をはって生きてばかりではなく、力まずに、女性のように自由で柔らかく生活したい自分がいる。そこから、他の下着、黒い革のスカート、ワンピース、おっぱい(を売っている店がある)、かつら、化粧品と、女装のための買い物にはしる。

 一般的だった男性が、女装する。妻は戸惑い、男性の古い友達が次々と去っていく。しかし、一部の友人は一緒に外出して不思議な時間を持つ。また、女性の集まりに呼ばれて共感しあう、町で女性にほほえみかけられるなどして、男性だったときには味わったことがない、人との心の交流を持つ。一方で男性からはセクハラを受けたり、電車でチカンにあったり、夕暮れの公園で暴漢に襲われたり、考えもしなかった理不尽な不快なことに遭遇する。

 そして著者は、自分が「男らしさ」という規範に、どれほど、がんじがらめになっていたかを実感していく。

 新発見が2つあった。

 一つは、洋服を選ぶこと、化粧すること、アクセサリーをつけることが、すごく楽しいものだったということだ。楽しい部分はもちろんあるが、その場その場によって、ここではこんな服が無難だとか、化粧はこういうふうにしたら問題がないとか、かなりてきとうで、義務的になっていたような気がする。

 もう一つは、女性も男性に対して、固定概念を押し付けてきたのだなということ。これは著者が、本の中の「女子会」で女性に対して力説している場面があって、とても面白く読んだ。このへんは、男女の性差の考察になっていて、読み応えがあった。

 男性が女性に対して抱いている理想の女性という幻想に、わたしはひそかに、うんざりしてきたものだが、逆のことは考えていなかった。わたしは男性に対して、こうだったらいいなという理想を持っているかもしれない。いざというときには力強くて、賢くて、女性には親切で、ゴキブリがでたら退治してくれる(あと、細々と…)。でも、実際に、そんな理想通りの人はいないかもしれない。たとえ出会ってすぐはそうであっても、長く時間がたてば、違ったものになるように思う(時間がたっても理想のままの人もいるかもしれないが)。

 著者は、女性を理解するために女装したとも書いているが、この本は女性が男性を理解するのにも役立つ。もう少し…わたしは夫にやさしくなろうと……思った。

 前に、電車で女装した男性と隣りあったことがあった。背が高くてやせていて、スカート丈の短い服を着た40歳前後の男性だった。皮膚のふんわり感は女性にはかなわないところだが、筋肉質の足は美しく、著者のように、ピンク系のオープントゥのハイヒールをはいていた。カバンも上質なもので、絹のような薄いワンピースに、薄いふわふわなストールを巻いている。女性のきめ細かい肌にはかなわないが、化粧もしていた。髪の毛は叶恭子さんのような、薄い茶色のロングの縦巻きカールだった。

 わたしはその人に好感のようなものを持ち、スタイルと、服の女性らしさと、女性らしい気持ちという点で「負けた」と思った。

 そして、この本を読んで、男性が女装したときに着る服は、薄いふわふわ素材が多いなあと思った。なぜだろう…。本・読書



by tarukosatoko | 2016-01-15 17:30 | | Comments(0)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


by さとこ タルコフスカヤ