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『たかが世界の終わり』居心地のいい不幸よりは幸福を…、26歳フランス人映画監督、グザヴィエ・ドランにブラボー!

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 『Mommyマミー』『わたしはロランス』などで話題になっていたカナダの映画監督グザビエ・ドランの映画を初めて映画館でみることができた。監督が26歳のときの『たかが世界の終わり』だ。2016年、カナダ・フランスの合作映画で、99分。

 主人公のルイにギャスパー・ウリエル。2014年の『サンローラン』でサン・ローランを演じていた人だ。『ゴダールの探偵』にも出ていたナタリー・バイ、『エディット・ピアフ愛の賛歌』のマリオン・コティヤール、『アデル、ブルーは熱い色』のレア・セドゥー、『ブラックスワン』のバンサン・カッセル、と豪華で、役柄の特徴がはっきりしているせいか、すべての登場人物が、強い個性をはなっていて、共感も持てる演技だった。

 劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」が原作で、自分の死期が近いことを告げるために、ずっと疎遠にしていた実家に12年ぶりに帰った若い作家が直面する家族の葛藤と愛を描いている。第69回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。

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 テーマは、家族がもたらす心の痛み。人はまず、家族によって、心をばっさりと傷つけられる。考えたこともなかったが、そういう一面は確かにある。主人公ルイが12年も家に帰らなかった理由は描かれていないが、家族の会話を聞いていれば、すぐに察することができる。ルイがゲイだということも関係があるようだ。

 ルイが帰宅してからずっと、その場にいることが嫌になるような、一触即発の薄氷を踏むような疲れる会話が延々と続く。一人で長々と話し続ける自己中心的な母、場の雰囲気を著しく悪化させる辛辣な兄、必要以上におどおどした兄嫁、神経質で壊れそうな妹…。でも、全員が、家族の存在に特別な感情を持ち、期待し、愛情やあたたかいものを求めている。そして、裏切られる。

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 しかし、むしろ、わたしは救われたような気持ちになった。自分も、両親など、家族としっくりといかなかった。理解してもらえないと傷ついていたが、家族もお互いに理解されないと傷ついていたことに、映画を見て、いまごろになって気が付いた。自分がもっと家族の誰かと似通った、親和性がある性格の人間であったら、家族はもっと幸せだったのかも…という思い、そんな自分のかつての思いと映画がぴったりと重なって、「フランスでもそんなことがあるのか…」と思ったのだ。

 最悪な存在は、すべてをぶちこわす兄なのだが、一番繊細なのも兄なのだろう。兄は事実を知っていて、最後の行動に出たのかもしれない。あるいは、弟の欺瞞に気が付いて、キレたのかもしれない。気持ちは痛いほどわかるが、行動が悪すぎる。
 兄を演じていたバンサン・カッセルは『ブラックスワン』の軽薄な演出家の役で、顔が印象的だったが、イメージが変わった。

 最期の鳥がとぶ場面は象徴的だ。家族といると、あの鳥のようなことが起こる。居心地のいい不幸よりは、幸福を…、それでいいのだと思う。偶像のような幸福な家族でないことを嘆くよりは、“たかが”家族と思っていたほうが、むしろ、家族が地上に存在していてくれるということ自体が、それだけで、いいことなのだと感じられるかもしれない。よほどの家族でないかぎりは。


by tarukosatoko | 2017-02-24 22:07 | 映画 | Comments(0)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


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