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本読み虫さとこ・ぺらぺらうかうか堂(フィギュアスケート&映画も)

衝撃的に大量発生する琵琶湖虫 今年は例年にも増して多かったそうだ

 十年以上前、滋賀県大津市に5年くらい住んでいた。風情があって、静かで、空気がよくて、自然が豊かで、人もゆったりしていて、大好きな場所だったので、引っ越すのは寂しいものだったのだが、ただひとつ、琵琶湖虫から解放されることだけは、非常にうれしかった!

「琵琶湖虫の掃除をしなくてよくなるねー」

 というのが、引っ越す人への挨拶の定番だった。

 琵琶湖虫というのは、琵琶湖の西側で主に秋などに大量発生するユスリカのことだ。蚊をひとまわり大きくしたような姿だが、蚊のように人をかむことはない。

 初めて琵琶湖虫の襲来を受けたときは、衝撃だった。その年は特に多かったようで、数が半端でない多さで、薄い存在感でどんどん死んでしまうので、ともかく、薄気味悪かった。

 特に夜になると、琵琶湖から信じられないくらいたくさんのユスリカが飛んできて、明かりに群がる。住人たちは細心の注意をして、夜は遮光カーテンをぴっちりと閉めて、一筋のあかりも漏らさないようにする。
 そうしないと、ベランダがたいへんなことになる。明かりがあれば、網戸にたくさんのユスリカがとまる。ベランダの壁にもとまる。物干し竿にも。うっかり窓をあけると、いっせいに大量のユスリカが室内に飛び込んできて、天井の一部が黒く見えるくらいになったこともあった。昼間もいるので、洗濯物も外には干さない。
 というのも、ユスリカはとまった場所でそのまま死んで、体がくずれて、泥のようなものになって、網戸の網目や物干し竿や洗濯物にべたっとつくのだ。そして、取れにくい。

 夜に明かりが必要な場所はお手上げだった。住んでいた集合住宅の階段は夜になると電気がつくから、階段のまわりの壁にユスリカがとまる。白い壁が灰色になるくらいの密度で、ユスリカがとまり、ユスリカの羽がゆれるからか、壁全体が微小な音をたてて、ぐわーんと、かすかに動いているように見えるのだ。
 暗くなってから帰宅するのは、背筋が寒くなるくらいに気持ちが悪かった。階段の一段一段にもユスリカがとまるので、ユスリカを踏まないと階段を登れない。踏みたくもないのに踏まないと家に帰れないのだ。ユスリカはつぶれて靴底にべたりとくっつく。

 悲惨なのは朝で、階段の壁にとまっていたユスリカは全部、その場で死んでしまっている。毎朝、下に落ちたユスリカをホウキではいて集めると、どんぶり鉢いっぱいくらいになる。また、壁にくっついたままのユスリカは黒っぽいカーキ色のヘドロ状になって、はりついている。

 地元の人によると「琵琶湖虫は、琵琶湖の泥を食べているから」死んだら泥のような状態になるのだそうだった。「琵琶湖の環境破壊で発生しているらしいよ」ということで、湖東では発生がなく、湖西だけのものらしかった。

「琵琶湖虫が蚊のように人をかむ虫だったら、ここには住めないよ!」とも言い合ったものだ。

 また、スーパーや小売店は、店がガラス張りなので、夜は無防備に明るくて、意図的にユスリカを集めているのか、といいたいくらいに集まる。ガラスはどんどん薄汚れていく。自動ドアが開くたびに、大量のユスリカが店内に入ってしまい、商品にとまるというようなこともあった。
 膳所というところにある、百貨店のショーウインドも、発生時には、死んだユスリカで悲しいことになっていた。

 どうして、明かりに集まるのか?どうして住宅の廊下やベランダで力尽きて死んでしまうのか?ユスリカの命ってなんなのだ?


 その、思い出の、琵琶湖虫のニュースを読んだ。今年はいつもにも増して、多かったそうだ…。でも、琵琶湖虫も悪いことだけではないことを知って、救われた気持ちにもなれた。でも、「いい虫」とは…

 琵琶湖虫は長いときでもだいたい2週間くらいで、いなくなる。毎年ひどいということではなく、とても少なかった年もあった。そのあとは、熱心に、丹念に水あらいして、外壁がぴかぴかになる。一年にたった数週間のことだが、強烈な思い出ではある。





Commented by dazaiosamuh at 2017-05-23 18:15
ユスリカは小さい頃に故郷で少なからず見かけたことがありますが、大量発生などは聞いた事がありませんでした。
ネットで調べたところ、ユスリカを抗原とした「アレルギー性鼻炎」や「ユスリカ喘息」などもあるそうで、なかなか危険ですね。そういえば、去年、太宰の愛人・太田静子の故郷・滋賀県愛知川を訪れた際、大津駅周辺のホテルに泊まった思い出があります。夜の琵琶湖が綺麗でした。
Commented by tarukosatoko at 2017-05-26 10:10
> dazaiosamuhさんの故郷では大量発生していなかったとのこと、なによりです。存在感が薄い虫だから、たくさんいても、物悲しさが漂います。
ユスリカのアレルギー、知らなかったです。ますます、気持ちが悪いですね。もしかしたら、ユスリカが食べているという泥によくない化学成分があって、それがアレルギーを起こすのかもしれません。
太田静子の故郷が滋賀の愛知川だということは、dazaiさんのブログで知りました。dazaiさんが来ておられるときに琵琶湖虫がいなかったことは、幸いでした!
琵琶湖にはさまざまな伝説があって、おもしろいです。
by tarukosatoko | 2017-05-19 21:06 | 番外編 | Comments(2)

本をペラペラ読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートや映画、生活雑記もあり。

by タルコフスカヤ・さとこ
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