平昌オリンピック 注目だったアイスダンス 僅差でバーチュー&モイア組優勝 アクシデント後の「月光」が超絶だったパパダキス&シゼロンは銀メダル 


 フィギュアスケート競技の中では、アイスダンスが一番好きになってきている。二人の男女のユニゾンは、心の琴線に触れる。心が、美しいなにかで満たされるような、ロマンティックでドラマティックな物語世界。男女が手を取り合って、物語を作り出すというのは、人間のロマンかもしれない。

 しかし、昨日は物語どころではなかった。フランスのパパダキス&シゼロンに、思いもよらぬアクシデントがおこった。演技はじめにパパダキスの衣装のホックがはずれたのだ。そのままで演技は何もなかったかのように続行し、1位のテッサ・バーチュー&スコット・モイア組とわずか1.74点差という結果を出した。アクシデントの影響が最小限におさえられたのは幸いだった。

 ニュースを見てから演技を見直すと、確かに何度か、特に体をそらすところで、上半身の皮膚がかなり出ていた。演技後、自分の衣装の状態を見たパパダキスは、めくれていた衣装を上にあげた。そして、シゼロンがホックのところを止めた(ように見えた)。その一連の仕草はさりげなくて、最良の対処をしたと思う。でも、スケーターも観客もジャッジも、演技以外のことに気をもんでしまった。せっかくの演技なのに、テレビ放送はできないような感じだったし、動画も残らないかもしれない。あとで「オリンピックで最低の悪夢」だったとパパダキスは話したということだ。フィギュアスケートでは体の露出しすぎはルール違反になって減点対象になるということだ。しかし演技を中断しなかったからなのか、肌を露出したというような理由での減点はなかった(ようだ)。パパダキスはがんばった。

 (平昌オリンピック団体のアイスダンスでは、韓国のミン・ユラ選手の衣装がはだけるという同じアクシデントがあった。でも、同じく演技を止めることはなかった。数年前のグランプリシリーズではスウェーデンのヴィクトリア・ヘルゲソン(ヨシ・ヘルゲソンだったかもしれない)のホックがはずれて、一気に脱げてしまいそうなのを、手でとめて、演技を中断してホックをはめ直すということがあった)



 そして、結果は、テッサ・バーチュー&スコット・モイア組(カナダ)が優勝した。わずか0.79点の差でガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組は2位になった。フリーだけをみると、0.95点差でパパダキス&シゼロン組が1位だった。演技内容を見ると、どちらが優れているとはいえない、双方ともに、ものすごい演技だった。

 「ムーラン・ルージュ」のバーチュー&モイア組は全くスピードが落ちることなく、動きの一つ一つが完成されていて美しく、ものすごいキレがあって、力強いスケーティングでぐいぐい押してくる、スターズアンアイス的な、カナダの洗練された演技だった。もう圧倒的という言葉がぴったりはまるものだった。ただ、奥ゆかしい日本人であるわたしの家族は、、動画を見て「この人たち、なんか、怖いよ~」と言っていた。
 2010年バンクーバーで金メダル、2014年ソチでは銀メダル、今回はまた金メダルだった。

 「月光」を滑ったパパダキス&シゼロン組は言葉も出ない超絶な演技だった。こんなきれいなものは見たことがないと言いたくなるような。細かい動きが意味不明ではなくて、一つ一つ、動きが示す内容が、正確に、叙情的に、伝わってくる。絶妙で、心に訴えかけてくる、水もしたたる芸術世界を作り上げていた。ショートもフリーも、演技構成点では、ごくわずかづつだが、パパダキス&シゼロン組が点数が高かった。家族は奥ゆかしいので、こんなふうに男女がふるまう様子はちょっとひいてしまうのではと思ったが、こちらはそういうのを超えて、心を打たれたようで、最後まで黙っていた。

 3位は、我らのマイア・シブタニ&アレックス・シブタニ(アメリカ)だった。ソチでは9位だったが、ついにオリンピックメダリストになった。二人の滑りは他の誰とも似ていなくて、独自で、特に、シンクロナイズドツイズルは…、大好きだ!二人ほどコールドプレイの曲が似合うスケーターはいないと思う。

 あと、5位の、「オブリビオン(忘却)」のボブロア&ソロビエフ(ロシア)は五輪前に見たときも、ぞくぞくしたが、今回はもっとぞくぞくした。なぜここで頬をさわったあとに頭をさわるのか、なぜここで頭に置いた手をポーンと上にあげるのか、なぜここでへんな笑顔で手をくるりと回すのか…、細かい動きの意味がまったくわからないし、笑顔の明るい部分が特に不安感をあおる。そして、絶望的な雰囲気で終わる…。だが、キスクラではくったくのないボブロワの笑顔。そのギャップが大きいところにも、ぐいぐいと惹かれる。
 そして、コリャダ、アリエフの演技のときにもいた数人の派手な色合いのロシアの脳天気な応援団が、アイスダンスでも派手に応援をしていた。この応援団は、フィギュアスケートだけではなく他の競技でも応援をしているらしい。演技内容と結果がどんなふうであっても同じ応援をしているのが、不思議だ。応援団の人たちには、じぶんら、演技ちゃんと、見とう?見てへんのんちゃう?と、低い声で、神戸弁で言いたい。

 そして、8位に入賞した「007」のアメリカのギレス&ポワリエ組も、これからも見ていきたいカップルだ。すごいぐるぐると速いリフトなどはなかったように思うが、ステップをふむときのぐいーんぐいーんが最高だ。強いギレスと弱めなポワリエの組み合わせがいい感じだ。

 そして、上位選手に負けないくらい素晴らしかったのは日本の村元哉中&クリス・リード組だ。いつのまにか、世界に出ても見劣りしない雰囲気を身につけ、表現を身につけていた。町田樹さんの「クリスが風を、村元哉中が桜を」という解説を頭に置いてみると、本当に!! みごとに風に舞う桜が表現されていた。まだ、トップ選手たちのようなぐいーんぐいーんと豪快なステップまではいかないが、全体にはとても魅力的だ。リフトもみごたえがある。振付けはマッシモ・スカリだ。ダイナミックな自然の、感動的な光景をリンクの上に描き出していた。クリス・リードは姉のキャシー・リードと出場したバンクーバーオリンピックで17位、ソチでは21位だった。今回は15位にまでのぼることができた。この急成長ぶりを見るにつけ、もっとうまくなっていきそうに思える。
 演技後、応援席の日本人が映し出されたのだが、その後ろにいたカナダの応援団の白髪の女性が、口を大きくあけてあくびをしているところも映っていて、それがなんともおおらかで、見ていてかわいらしかった。
 

 驚いたのは、ライバルが同じコーチのもとで練習していることだ。羽生選手とフェルナンデス選手のようなものだろうか。そして、同じコーチということだが、キスアンドクライには違う人が座っていたりする。そのへんは、わからないが、来シーズンには、わかるかもしれない。

マリーナ・ズエワ&マッシモ・スカリ&オレグ・エプスタイン
 村元哉中&クリス・リード
 マイア・シブタニ&アレックス・シブタニ

マリー・フランス・デュブレイユ&パトリス・ローゾン&ロマン・アグノエル
 テッサ・バーチュー&スコット・モイア
 ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン
 マディソン・ハベル&ザカリー・ダナヒュー




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by tarukosatoko | 2018-02-20 22:28 | フィギュアスケート | Comments(0)

本をペラペラ読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートや映画、生活雑記もあり。


by タルコフスカヤ・さとこ
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