スターズオンアイス2018大阪 覚え書き エフゲニー・プルシェンコ「タンゴ・アモーレ」

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 ミニマリストへの片付けの最中だったが、スターズオンアイス2018大阪に行ってきた。ひとまずは、覚え書きを。

 すごくいいなと思ったのは、神戸の坂本花織だった。2016-2017のショートプログラムだった「アーティスト」を滑ったのだが、滑り方が男前で、ジャンプも小気味いい。スピンもステップも潔い。全体としてバランスがよくて、勢いもあり、とても良かった。

 テレビで見るよりもずっと良かったのは、ケイトリン・オズモンドだ。「Lost」で滑ったのだが、右回りのジャンプやスピンが男子並みの大きさで、かわいらしい容姿との組み合わせが不思議な感じで、パワフルだがコントロールされていて…とても、能力がある人なのだなとわかった。

 そして、神戸の三原舞依はエキシビションのサラ・ブライトマンの「ラ・カリファ」で滑った。氷とエッジの接触の具合が独特で、そのなめらかさは、小塚崇彦さんかと思った。きれいなスケーティングというのは三原舞依のスケーティングのことだと思った。

 異彩を放っていたのは、エフゲニア・メドヴェジェワだった。すごく細くて、すごく小さくて、くるくると波打つ髪の毛が腰のあたりまであるのではないかと思われるほど、長い。その姿だけで、「この人は何者なの?!」と思わせるところがあった。ちょっとオタク的というか、いわくありげな人物に見える。個性が強い。曲は「Beautiful」。怪我の影響で、ジャンプがないプログラムになっていたが、動きの一つ一つ、小さな動きまですべての動きに意味があり、思いがあり、無意識だったり、ぞんざいだったりする動きは一つもない。もともと何か大きなものを持った人がスケートと出会い、人とスケートが合わさって、すごい化学反応を起こして、今の、そして、これからのメドヴェジェワがある…と、感じた。

 4月1日、最高に盛り上がったのは、ネイサン・チェンだ。なんといっても、あのかっこいいショートプログラム「ネメシス」だったのだ!きゃああああ~。しかも、ネイサン・チェンは、テレビとか動画ではその真価がわからないほどに、踊るのがうまかった。遠くからでも、手足の微細なニュアンスのある動きがみてとれる。その動きが、いちいち、最高の動き方をする。他の選手の動き方とは質的に違っている。とにかく大きく動くだけではない、テクニックみたいなものが身に付いているのだろう。アマチュア競技の中にちょっとしたプロが混じっている感じだ。しかも、試合では4回転ジャンプを多種類とべるとあっては、無敵なのではないか。ルールの改正があって4回転ジャンプの制限が出来たとしても、ネイサンは負けないだろうと思える。黒い衣装だったが、袖の長さがひじの部分まであって、その袖丈が絶妙で、ネイサンの手の動きをより大きく美しく見せている気がした。

 宮原知子は「アランフェス協奏曲」。プログラムの前と後には、いとうみつるさんのバイオリン生演奏があって、霧でかすかにもやっているリンクに響くバイオリンのアランフェスの音色には、うっとりとした。宮原選手は実際はとてもお嬢様な帰国子女なのだが、薄幸の女性、サユリとか蝶々夫人とかミス・サイゴンとか、実生活ではおよそ縁のない人物を演じても、違和感がなく、そんな風に見えるところがすごいと思う。アランフェスも家族の病や死などがテーマなのだが、それが伝わってくるのもすごい。他の選手にはない能力なのではないかと思った。

 そして、宇野昌磨は、「See You Again」だった。ショートプログラムの「四季・冬」も見たかったが。宮原選手もそうだが、宇野選手も暗めなプログラムをドラマチックに演じるのがとてもうまい。宇野昌磨は見ていて、うれしい気持ちになる選手だ。もっと見ていたかった。

 そして、アリーナ・ザギトワ。遠くて顔が見えにくいためか、テレビでは顔ばかり見ているせいか、最初は誰だかわからなかった。でも、滑り出すと、ああ、ザギトワだ、とすぐにわかった。世界選手権ではうまくいかなかったが、うまく滑っていた。滑ったのは、例の「Afro Blue」だった。あのボーカルとザギトワの思いきった衣装、卓越した滑りで、奇妙で怖いような暗さと深さを感じさせる世界を生み出していた。

 最後が、エフゲニー・プルシェンコだったのは、ちょっと意外だった。「タンゴ・アモーレ」だったのはうれしかった。北米のクールなスターズオンアイスで、プルシェンコだけが、客席に大いにアピールしていて、おもしろかった。プルシェンコのあの動きは健在で、見応えがあり、カリスマ性もあり、観客への働きかけに熱心だった。そのような気の使い方を見るに、ああ見えてもプルシェンコは苦労人なのかもしれないなと感じた。

 紀平梨花、かなクリ、パトリック・チャン、テッサ・バーチュー&スコット・モイア、メーガン・デュハメル&エリック・ラドフォード、ハビエル・フェルナンデスも出ていて、それぞれ素晴らしかった。世界選手権でみごとに銀メダルをとって、日本女子の3枠を自ら勝ち取った樋口新葉は「ハレルヤ」だった。樋口選手の選曲はいつもとてもいいなと思う。来シーズンからラファエル・アルトゥニアンコーチに師事することになった本田真凜も出演していた。本田選手が持てる力をどんなふうに開花させるのか、開花したらどんなことになるだろうか。

 最後にプルシェンコの2009年の「タンゴアモーレ」を。2010年バンクーバーオリンピックで銀メダルをとった年のフリーだ。滑ってはジャンプ、また滑ってジャンプという印象があったが、なつかしいストレートラインステップはプルシェンコらしさが全開だ。プルシェンコはこれでいいんだなと、はじめて思った。
 動画の最後には、強気発言のロシアの重鎮ミーシンコーチの談話もある。



つぶやき

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Commented by yoripo at 2018-04-07 01:34 x
さとこさん、こんにちは。

坂本香織ちゃんの来シーズンのプログラムに関してですが(私には何の権限もありませんが)、高橋大輔のブルースで思い出したのですが「道化師」なんかも合うと思うんです。
他にもレ・ミゼラブルの「One Day More」、オペラ座の怪人のファントムのパートなど男子シングルで使われている曲が思い浮かびます。
ネメシスなんかもいいと思うのですが、ネイサン・チェンの記憶が新しいので、タンゴ・アモーレなんかはいいと思いませんか?
しかしあまり他の選手の印象が残っているのも何なんで、まだ使われていない男前のジャズやブルース、ロックなど斬新なプログラムを期待しています!
振り付けも考えようとしたのですが、、、無理でした(笑)

ジェイソン・ブラウンにはSam Smith の「Too Good At Goodbyes」をリクエストします。
(一度「Writing's On The Wall」でSam Smith 使っているのでやらないでしょうが...)
もしくはAdelを...。
Commented by mo8_a29 at 2018-04-07 10:40
実は・・・私も スターズ・オン・アイス 昨日行ってきました。プルシェンコさんの華の演技を観てきました。プルシェンコさん サービスしてましたね!EX席の皆さんの声援も熱かったですよ。一緒に行った人が「やっぱり ジャパンマネーは魅力なんだよ。」なんて黒いことをいってました。。まあ それはさておいて素晴らしかった!
ネイサンは出演していなかったです。きっと アメリカ版のスターズ・オン・アイスに出演しているのでしょう。残念でした。
ワタシ的には、五輪に出られなかった女の子たち…真凛さん
舞依さん 新葉さん のゴージャス演技に魅了されました。
五輪で 今ひとつ実力を出しきれなかった 田中刑事さんも
素敵だったですね。
存在感を それぞれ 出してましたよね~~~
お腹いっぱいでした。
そして テサモエ組のMJの『You Rock MY World』嬉しかった~~ MJ最後のアルバムの中に入っている曲です。
Commented by tarukosatoko at 2018-04-07 22:02
> yoripoさん、こんにちは!
坂本さんの来シーズンのプログラム、考えていなかったですが、どんなものが出てくるのかな。すごく楽しみですね。
ショートプログラムでの月光のことを思うと、「道化師」、いいですね。いいっていうだけでなく、あっているような気がします。高橋大輔、ボロノフ、ビチェンコなどそれぞれにいい味を出しています。坂本さんのも、見てみたいです。エキシビションで「ブエノスアイレスの春」をしているし、ピアソラもあっていますね。
レ・ミゼラブルは最近たくさんの人の演技を見ましたが、アメリカのグラント・ホクスタインの「One Day More」が印象的で、音楽とともにどんどん加速していくところが大好きでした。
そして、坂本さんはクリスティーンではなくて、ファントムですね。
男前ジャズ、男前ロック、男前ブルース…

「Writing's On The Wall」???と思って調べたら、あの素敵プロでした。Adelはこの数年、多用されていますが、いい感じです。ルールが改正されたらジェイソン・ブラウンがもっと評価されるかもしれません。わからないですが。ロヒーン・ワードとがんがんいってほしいです!!
Commented by tarukosatoko at 2018-04-07 22:13
> mo8_a29さん
えええええ、行かれたのですね!
プルシェンコさんはやはり、客席にアピールしていましたか…。ううう、ジャパンマネーか。あっているかもしれませんね。フィギュアスケートのアイスショーは高いですものね。他の国のアイスショーはいくらくらいで見られるんでしょうかね。
そうそう、田中刑事さん、かっこよかったです。
でも、演技を見ながら、もう一歩、前に行けるだろうなと思いました。まだ、がらっと変わる可能性があるなと思いました。町田さんが、急にぐんと伸びたような感じで。
テサモエはすごかったです。MJだったのか…、音楽に気がつかない感じでただただ見とれていました。
確かに、出演者が多くて、どの人も存在感が強くて、スターズオンアイスにしては、充実していましたね。
Commented by にくにく at 2018-04-08 03:34 x
初めまして。いつも投稿楽しみにしています。
坂もっちゃんよかったんですね、まいかおコンビが今一番好きな私は2人の来シーズン更なる期待を込めています。
若葉さんはシーズン最後に大活躍、拠点移動の真凛ちゃんの巻き返しも期待大です。
紀平ちゃん、本郷ちゃん、さっとんも。書ききれない!
多分プルシェンコはフィギュア界ナンバーワンの苦労人だと思います。
食う物に困る幼少期、嫉妬深い先輩からのいじめ、
息子のスケートの為に極寒のロシアで男性以上の激務でレンガ運びの仕事をしていたお母さんに
スケ連から貰える僅かなお小遣いを一銭も使わずコートを買ってあげたエピソード、
度重なる手術、バンクーバー五輪の外部ジャッジからの当て擦りメール騒動、その他諸々。
ザギトワ等十代でキャリアを極めた選手を皮肉る者がいれば率先として彼女らを庇い、
国内のトップグループから離されたサハノヴィッチやたソトニコワのコーチを担ったり、
優し過ぎるくらい優しい人だなと思います。(ただし野郎はその限りではない)
並々ならぬ真央ちゃんへの思い入れの強さは彼女の背景や理想にシンパシーを感じる部分多いんだと思います。
無論お金大好き別荘建てるのも大好き 笑
Commented by tarukosatoko at 2018-04-10 01:17
> にくにくさん、コメントをありがとうございます!
プルシェンコのエピソード、泣けてきますね。
特に

「息子のスケートの為に極寒のロシアで男性以上の激務でレンガ運びの仕事をしていたお母さんにスケ連から貰える僅かなお小遣いを一銭も使わずコートを買ってあげた」

という部分は泣けてきます!
寒さの中でレンガ運びは、きっとものすごくキツイです。ちっさい例で恐縮ですが、レンガを買おうとしたことがあって、そのあまりの重さに驚いたことがあります。プルシェンコのお母さん、がんばられたのですね。
プルシェンコの家を訪問するテレビ番組を見て、あまりの豪華好きな様子に「どひゃあああ」となっていましたが、根っこの部分には人間的な熱いものがあるのですね。

わたしも!まいかおコンビは大好きです。もともと真央ちゃんファンで、好きな女子選手は現れないかもって思っていましたが、現れました。わかばさんは世界選手権で自分のカラを破りましたね。本郷さんのスケートも大好きです。あと、なぜだか、カナダのデールマンもがんばってほしいです。
by tarukosatoko | 2018-04-06 00:41 | フィギュアスケート | Comments(6)

本をペラペラ読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートや映画、生活雑記もあり。


by タルコフスカヤ・さとこ
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