本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。
by さとこ タルコフスカヤ
『レディ・バード』 身に覚えがありすぎて涙も出ない…
『万引き家族』を見に行ったら、レディスデイだったため、満席で入れず、仕方なく、隣でしている『レディ・バード』を見ることにした。
朝一番の上映で満員の『万引き家族』は人が続々とつめかけて、賑やかだった。いそいそしているその人たちが、とても幸せそうに見えた。隣のシアターのわたしの『レディ・バード』はなんと観客が3人という少なさだった。他の二人は女性で、気のせいだと思うが、二人とも、それとなく、横道にそれた人のような雰囲気があった。人が少なすぎて、怖い。初めて行った映画館だったので、映画館内の作りがよくわからなくて、暗闇なので怖い。なんかあったらどうしよう。少人数テロとか…、大災害とか、映画館で人質をとって籠城とか…。怖い怖い。早く外に出たい、と思いつつ、予告編が始まった。
本編になるときに、ふと周りを見ると、わたしの席のある列の右端と左端、両端に人が一人ずつ座っているではないか。それも同じような白髪の上品な女性が一人ずつ。なんでわざわざ、列の両端に座るのだろう。真ん中だってたくさんあいているのに。この人たちが悪者であったら、外に出たくても止められて出られないではないか。いつの間に人が来たのだろう。もしかして…、幽霊なんじゃないか。幽霊だったらどうする?
などと、恐れていたが、映画が始まると、引き込まれて、幽霊のことも、怖かったこともすぐに忘れた。
主人公は西海岸の保守的な地域に住む高校3年生の女の子だ。
これから大学を受けるのだが、看護師をしているらしい母親は夜勤のあるハードワークをこなし、お金のやりくりなどに苦慮して、娘のことを心配して干渉するが、無視されている。顔にしわが目立ち、表情が険しい。母親は地元の公立大学への進学をすすめるが、娘は公的援助を受けて自由闊達な東海岸の大学に行きたがっている。
父親はうつ病治療中で仕事がうまくいっていないが、妻の気持ちも娘の気持ちも理解して、見守っている。主人公は労働者階級が住む場所に家があるが、それがコンプレックスになっていて、富裕層が住む地域のお屋敷に憧れている。
とにかく、娘は母親の苦しみや一生懸命に娘を思う気持ちにまったく気がつかず、母親が傷つく言動を繰り返す。母は娘の話も聞かず、自説を押しつけるばかり。
これは自分が子供であったとき、さらに自分が親の立場である今、共に、微妙にあてはまるので、本当に心が痛かった。痛すぎて涙も出ない。父親は傍観し、時に二人を個々に励ます。これも父親がそうだったし、夫がそうだ。
この映画は偶然とは言え、かなり心の痛い部分に触れる映画だったのだ。『万引き家族』ではなく、『レディ・バード』が、わたしが今見たらいい映画だったのだろうと、不思議な気持ちで納得した。
主人公は映画の中で二人のボーイフレンドが出来るのだが、一人目は裕福だが指向が違う人で、二人目は裕福だが軽佻な人だった。そのあたりも、きれいなお話にしていなくて、なんともリアルだし、主人公の人生がハードなものになることを予言しているような。
主人公も母親も友達もボーイフレンドも、完璧な理想の人物は一人もおらず、誰もが性格や行動にナチュラルに欠点があるところにも好感が持てる。
そもそもは、アメリカの決定的な貧富の差をベースにした話なのだろうか。親子の美談めいてもいるが、問題なくいい話ではあるのだが、そんな単純なものだろうかと最後のシーンを見て思った。
監督 グレタ・ガーウィグ
クリスティン(娘) シアーシャ・ローナン
メトカーフ(母) マリオン・マクファーソ
by tarukosatoko
| 2018-06-19 22:09
| 映画
|
Comments(4)
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by
mo8_a29 at 2018-06-21 14:17
『万引き家族』そんなに混雑してる映画なのかと思って
近所のシネコンに駆け込んで見てきました。けどやっぱ田舎だから普段よりはいくらか多い観客数でした・・・
ところで
tarukosatoko さんが観たこの映画 母親が陥りがちなこと
娘が陥りがちなことが描かれている映画のようですね。子供を傍観することの難しさ ・・・また 過干渉に素直な子供の恐ろしさはあるようですので この主人公の女の子はとても健康に育っている・・・なんてひねくれ者の私はtarukosatokoさんの文章を見て思いました。
私はどちらかというと…傍観者タイプ?かなと思うのですが
息子には、そうは思われなかったようです。むずかしい___育てるって。
近所のシネコンに駆け込んで見てきました。けどやっぱ田舎だから普段よりはいくらか多い観客数でした・・・
ところで
tarukosatoko さんが観たこの映画 母親が陥りがちなこと
娘が陥りがちなことが描かれている映画のようですね。子供を傍観することの難しさ ・・・また 過干渉に素直な子供の恐ろしさはあるようですので この主人公の女の子はとても健康に育っている・・・なんてひねくれ者の私はtarukosatokoさんの文章を見て思いました。
私はどちらかというと…傍観者タイプ?かなと思うのですが
息子には、そうは思われなかったようです。むずかしい___育てるって。
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bienes at 2018-06-22 13:45
地震びっくりしました。
いつでもどこでもこういう状態になるということを、改めておもいしらされました。
万引き家族は、流石に人気ありますね。話題の映画だから
でも、さとこさんの観たものー私は、今はそちらを観たいような気になりました。
いつでもどこでもこういう状態になるということを、改めておもいしらされました。
万引き家族は、流石に人気ありますね。話題の映画だから
でも、さとこさんの観たものー私は、今はそちらを観たいような気になりました。
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tarukosatoko at 2018-06-22 21:21
> mo8_a29さん、『万引き家族』、見られましたか。今の世相が反映された映画なんで、見たいなあと思っています。
そっかー、そういう見方もあるのですね。周りを見回すと、親の干渉に素直に従って、楽勝な人生を送っている人もいますが、〝過干渉に素直な子供〟ていうのはうまくいけばいいですが、うまくいかなかったときには悲劇ですね。
自分も、自分の子供も〝親の過干渉に反抗する子供〟でした。結果、自分の母も、自分も、干渉したいが傍観するしかない母親になりましたよ。コメントをいただいてそれで良かったのか…と改めて思うことが出来ました。
子供に親の思いが伝わるのは、子供が親になったときでしょうかね。
育てるっていうのは、本当にたいへんなことです…。
そっかー、そういう見方もあるのですね。周りを見回すと、親の干渉に素直に従って、楽勝な人生を送っている人もいますが、〝過干渉に素直な子供〟ていうのはうまくいけばいいですが、うまくいかなかったときには悲劇ですね。
自分も、自分の子供も〝親の過干渉に反抗する子供〟でした。結果、自分の母も、自分も、干渉したいが傍観するしかない母親になりましたよ。コメントをいただいてそれで良かったのか…と改めて思うことが出来ました。
子供に親の思いが伝わるのは、子供が親になったときでしょうかね。
育てるっていうのは、本当にたいへんなことです…。
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by
tarukosatoko at 2018-06-22 21:26
> bienesさん阪神大震災のあと、神戸は地震らしい地震がなかったですが、まさか…というタイミングで来ました。阪神大震災を思い出して、怖かったです。神戸でも場所によっては家具が動いたりしたところがあるようでした。
『レディ・バード』はテントウムシのことで、主人公は、親につけてもらった本名を使わずに、自分を〝レディ・バード〟と名乗っているんですが…、親子というものは近すぎるぶん、葛藤がありますね。でも、そんな経験をできることにも、感謝ですね。
『レディ・バード』はテントウムシのことで、主人公は、親につけてもらった本名を使わずに、自分を〝レディ・バード〟と名乗っているんですが…、親子というものは近すぎるぶん、葛藤がありますね。でも、そんな経験をできることにも、感謝ですね。
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