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ぺらぺらうかうか堂(フィギュアスケート&本&タイドラマ等&雑記)


本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。
by さとこ タルコフスカヤ
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『肉体の芸術』(石福恒雄・著) ニジンスキー・バレエの世界から来た人、美のための美の放棄、そして、浅田真央

『肉体の芸術』(石福恒雄・著) ニジンスキー・バレエの世界から来た人、美のための美の放棄、そして、浅田真央_e0337786_16313247.jpg

 紀伊國屋新書『肉体の芸術』を図書館でかりて読んだ。古い本だがとても面白く読んだ。


 ニジンスキーは1890年2月28日にキエフで生まれた。この本はニジンスキーが生きていた時代の今とは異なる時代の空気が感じられて、しばし時間旅行で過去に行って来たような、不思議な気持ちになる。わかったことは、この時代には、ニジンスキーだけではなく、時代そのものに悲劇的な要素があったようだということだ。

 ニジンスキーは1900年王室舞踊学校に150人の中から選ばれた6人の中の一人にはいった。この中の一人は20歳になる前にインフルエンザで死亡、一人は嫉妬で狂った男に23歳で殺され、一人は21歳のときに毒をあおぎ、一人は革命の時にあやまって殺された。残る一人のブルマンは生き延びて『ニジンスキーの悲劇』という本を書き残している。6人のうち、4人は早くに亡くなり、ニジンスキーはダンサーの生命をはやくに失う。

 気になった部分を書き出しておく。

「ニジンスキーには技術をこえた<なにか>があった。」

「彼はバレエの世界から来た人間であった」

「跳躍する彼をみてある批評家は<彼は舞台に舞い降りる>と評した。この言葉はいま単なる文学的表現をこえて意味を持ってくるように思える。もしバレエという世界があるとすれば、彼はこの<別世界からの客人>であった」

「ペトルシュカ」 魔法使いによって生命を与えられた人形、けれどもペトルシュカは人間のように自由に踊ることは出来ない。はげしい生命を内に秘めながら、あくまでも人形という枠の中でしかペトルシュカは動くことが出来ない。彼は貴族達の意のままにされ、踊り子を愛しても裏切られ、同僚には冷たくあしらわれる。ロモラは「ニジンスキーは虐待された捕虜の悲しみ、心底からの絶望、自由への憧れ、獄吏への憤りを心ゆくまで見事に表現した」と述べている。

 ニジンスキーの踊りの美学の特徴は何だったのであろうか。それはなによりもまず、「美のための美の放棄」だった。

 クラシックの基本技術を無視した新しいテクニック

 「もちろん生は変転していく。でも誕生も死も似たようなものだ。どちらも進行していく円の一部に過ぎない。わたしたちは宇宙の中で無限の神の一部なのだ。わたしたちがなにかあたらしいものを創造するとき、わたしたちは神を反射している」

『肉体の芸術』(石福恒雄・著) ニジンスキー・バレエの世界から来た人、美のための美の放棄、そして、浅田真央_e0337786_16323749.jpg
 とても美しい写真だ。まるで、萩尾望都の漫画に出てくる人のようだ。ロシア人で肉体の芸術表現をする人は、まさに萩尾望都世界だ。


 1968年の本で、300円。古い本=読みにくいということがない。著者は独自の考え方を持った人で、ほんの少しロマンチストな感じがあり、ドライな人ではないことが感じられた。著者も45歳という人生半ばの年齢で、馬術の練習中の事故で亡くなっている。著作活動の途中だったらしい。

 本のことをわたしなりに、ものすごく手短にまとめるなら、ニジンスキーは普通の人間とは違い「バレエの」の世界から来た人のようだった。創意工夫する人だったが、健康に気を配るなどの実用的な働きが少なく、子供のようなところがあった。ニジンスキーなりの確固とした美の形がニジンスキーの頭の中にはあり、それを、形にするのは、本人にとっても周りのスタッフやダンサーにとっても過酷すぎる練習や体の動き方があった。美のための美の放棄はバレエの基本を破るもので、賛否両論がわきおこった。貧しい人や戦争で亡くなった人など弱者への思いが強かった、等々。

 アンドレイ・タルコフスキーもそうだったが、ニジンスキーも、父親が幼いときに家を出てしまい、母親が苦労して子供達を育てる。その母親への思いの強さはタルコフスキーと共通する。普通には、両親の離婚で、ぐれてしまうということが多いように思うが、二人とも、うまくぐれたのだと思われる。




 読後、ぼーっとしながら、本の内容を思い起こしているときに、ふっと、浅田真央さんもこんなふうなのかと思った。真央さんは最近のテレビ番組で自分のことを氷上生物だと話していたが、真央さんはフィギュアスケートの国から来た人のようであり、グランプリファイナルがどういう試合か最初は把握していないなど、価値観が浮世離れしている。そして、まわりの物差しで動くのではなく、自分の基準を持っていて、大成功しながらも悲劇的な部分も持ち合わせ、人々の賛否両論の議論の対象になった。
 それから、浅田真央さんの滑りにはただの技術や表現だけではない、〝なにか〟がある。浅田真央さんがリンクに立つだけでうれしく切なくあたたかい思いがわいてくる。

 100年後、伝説のスケーター浅田真央の書物が出ることが楽しみだ。できることなら、あの世でいたとしても(?!)、その本を読みたいものだ!そして、その前に、来年こそはサンクスツアーに行きたい!来年の願いはそれだけだ。






『肉体の芸術』(石福恒雄・著) ニジンスキー・バレエの世界から来た人、美のための美の放棄、そして、浅田真央_e0337786_16321159.jpg

つぶやき

ウィンタースポーツ







by tarukosatoko | 2018-12-04 18:22 | | Comments(2)
Commented by mo8_a29 at 2018-12-04 19:08
こんばんは~
ニジンスキーは 踊るために天から降りて来た人。
と 捉えているのですね。この著者は。伝説になってしまっている彼のバレエは想像することしか出来ません。美のために美を壊すような革新的なことをして しかもロシア革命前?でしょうか その頃の不安定な時期に 感銘を残して去っていったダンサー・・・だなんて 凄いですね と・・・感嘆してしまいます。萩尾望都さんが好きだから
望都さんが描いた漫画世界のようだというtarukosatokoさんの言葉に激しく頷いてしまいます。
また、浅田真央さん 「氷上生物みたいだった。」って言っていましたね。真央さんも フィギュアスケートをするために天が遣わした…のような感のする人。tarukosatoko さんの来年は 大いに『サンクスツアー』に行ってもらいたい!チケット運の 引きが良い事をお祈りしますよ。すぐ影響受けるけど『サンクスツアー』が近くに来てくれることをわたしも祈ってます。
Commented by tarukosatoko at 2018-12-05 20:31
> mo8_a29さん、ニジンスキーのことを記録した本を読むのは、萩尾望都の漫画を読んでいるような感じです。繊細で、美しいお話なので、久しぶりに心が躍る読書をしていますよ。

ニジンスキー(1890ー1950)が活躍したのはロシア革命(1917)の直前あたりまでです。とはいえ、バレエ・リュスはロシアでは公演をしたことがなく、パリなどのヨーロッパでの公演が中心だったようです。それにニジンスキーも踊れなくなってからもほとんどロシアではない国で生活していました。あと、ナチスによって命が危なくなったこともありましたが、九死に一生を得たそうです。60歳でロンドンでなくなって埋葬されましたが、墓地はのちにフランスに移されたそうです。


昨日、サンクスツアーの番組で少しサンクスツアーの様子を見ることができました。真央さん、5連続ジャンプを跳んでいて、すごく楽しそうで、それだけでも、うれしい気持ちになって、自分もがんばろうと前向きな気持ちになりましたよ。また、ツアーのメンバーを募集しているそうです。来年の公演が楽しみです。一度くらいは、行きたいものです!それと、わたしもバレエ公演も行きたいなと思っていますよ。
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