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ぺらぺらうかうか堂(フィギュアスケート&本&タイドラマ等&雑記)


本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。
by さとこ タルコフスカヤ
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『バレエ・リュス その魅力のすべて』(芳賀直子・著) 「ペトルーシュカ」の〝人形振り〟と〝死んでも死なない〟

『バレエ・リュス その魅力のすべて』(芳賀直子・著) 「ペトルーシュカ」の〝人形振り〟と〝死んでも死なない〟_e0337786_09442551.jpg

 この本はバレエ・リュスに関する辞書のような、集大成のような最高の本だ。著者は舞踊研究家の芳賀直子さん。巻末には人名・作品名索引まである。図書館で借りて全部は読み切れなかったが、丹念に記録されているので、覚え書きとして。また読みたいし、買えるものなら買いたい。

 まずは歴代ダンサーのちょっとした写真集で始まる。ワツラフ・ニジンスキー、リディア・ネリドワ、アドルフ・ボルム、エンリコ・チェケッティ、リョボフ・チェルニチェヴァ、タマーラ・カルサヴィナ、アリシア・マルコワ。これだけでも、うっとりする。

 1章はバレエ・リュスの詳細な解説。
 2章はセルゲイ・ディアギレフという〝天才を集める天才〟。
 3章はスター達と振付家たち。
 4章は全作品紹介。
 5章は美術家達と音楽家達。
 6章はディアギレフの死後のバレエ・リュス。

 びっくりしたのは、4章だ。4章を見ると、関わった作曲家はコルサコフ、チャイコフスキー、ボロディーン、ムソルグスキー、スクリャービンなど。美術家がすごい。アレクサンドル・ブノワ、レオン・バクスト、パブロ・ピカソ、マティス、アンドレ・ドラン、ローランサン、ココ・シャネル、ユトリロ、エルンスト、ミロ、ルオー。どこかにコクトーも関わっていたと思う。

 心血を注ぎ込んだ音楽で、舞台美術で、衣装で。なんという豪華さ。フィギュアスケートにもそんな可能性はある。可能性はあっても資金が…、その資金問題でディアギレフは常に金策に苦労していたようだ。当時は芸術を愛好するパトロネスが支えていたところがある。富裕層や貴族はそうすることで、芸術を育てることに貢献していた。うまく循環していると言えるのだろうか。なるほど。

 本のなかほどに唯一カラーのページがある。それは、『眠れる森の美女』のレオン・バクストによる衣装のデザイン画コレクションだ。「バクストは美術セットも含め200枚以上のデザイン画を描き、端役に至るまでが驚くほど絢爛豪華な衣装を身につけて舞台に立った。布を織り、染めるところから始まり、金糸銀糸で刺繍を施し、羽や宝石を縫い付けて、このデザイン画はほぼ忠実に実現された」とある。デザイン画そのものが美術作品のような魅力を放っていて、その詳細をじーーーーーっと見ていて飽きることがない。このような衣装の作り方もフィギュアスケートと重なる。

 ニジンスキーのこともたくさん書かれている。ニジンスキーは奴隷とか人形とか、悲しい立場にある存在を演じることが多かったようだ。
 『ペトルーシュカ(ロシア広場の人形劇)』は特に悲しく凄みのあるお話だ。舞台は1830年のペテルブルグの広場。魔術師の人形小屋で魔術で踊らされている3人の人形がいる。ぺトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人だ。ペトルーシュカはバレリーナに恋をするが、バレリーナとムーア人は両思いで、ムーア人は嫉妬するペトルーシュカを皆が見ている前で半月型の刀で殺してしまう。雪の上に倒れて死んだペトルーシュカに警官が気がつき魔術師を呼ぶ。

「魔術師は、ペトルーシュカは人形ですよ、と体に詰められたおがくずを見せながら言う。それを見て野次馬は興味を失って去ってしまう。ペトルーシュカの人形をひきずって小屋に戻ろうとする魔術師はペトルーシュカが屋根の上に居るのを見てびっくりする。ペトルーシュカは騙された人たちをあざ笑うかのように小屋の上で踊るのだった」

 ぞくぞくするようなお話だ。「ニジンスキーは恋する相手に見向きもされず、ムーア人に殺され、霊となって死なずに魔術師を脅かすペトルーシュカを当たり役とした」のだそうだ。

 そして、『ペトルーシュカ』は、しばしば、バレエ・リュスの作品に登場する「人形振り」「死んでも死なない」という二つのテーマを含んだ作品なのだそうだ。

『バレエ・リュス その魅力のすべて』(芳賀直子・著) 「ペトルーシュカ」の〝人形振り〟と〝死んでも死なない〟_e0337786_09450703.jpg


 ううむ。見たいもの、読みたいものがぐんぐんと広がる。自分がロシア人のフィギュアスケーターを好きなのは、ロシアバレエの伝統が底にあったようだ。また、「人形振り」「死んでも死なない」とか言うテーマにもひかれる。このテーマは日本の人形浄瑠璃などにもあるテーマではないかと感じた。「死んでも死なない」が人形浄瑠璃にあっただろうか?ないかもしれない。

ウィンタースポーツ

つぶやき



by tarukosatoko | 2018-12-18 18:25 | | Comments(2)
Commented by mo8_a29 at 2018-12-20 18:20
ニジンスキーの、ペトリューシュカ  なにか凄みがありそうですね。「人形振り」「死んでも死なない」なにやら情念の世界 ロシアバレエにも・・・あったんですね。
日本の古典芸能にもあるテーマじゃないですか・・・ちょっと調べたくなりましたよ。
Commented by tarukosatoko at 2018-12-21 01:25
> mo8_a29さん
ロシアバレエの作品解説を読んでいると、情念だらけです。ポジティブなんてものは少ない感じでした。人形とか死んでも死なないとか、いかにも日本の伝統芸能にありそうですが、まだ、見つけていません。なにかのひょうしにでも、見つけたら教えてくださいね。
情念という面では、近松門左衛門とか、そのあたりに通じるかな?!
まったく興味をもたずにきましたが、日本の伝統芸能もおもしろそうです。
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