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『女帝 小池百合子』(石井妙子・著) どうする東京都民



 東京都知事の小池百合子への告発本で、特にカイロ大学卒業の真偽についてたくさん書かれているのだが、最後まで読むと、何人も総理が入れ替わった平成時代の政治状況をつぶさに復習できる本になっている。政権与党も変わったし、いろいろな連立政権があったし、党を構成するメンバーも複雑に入れ替わった。阪神大震災もあったし、拉致問題もうやむやになったままだ。改めて、平成という時代を振り返る良書になっている。

 小池都知事を意識したのは、2016年のリオデジャネイロオリンピックの閉会式に着物姿で艶やかに登場して、五輪の旗を受け取ったときのことだ。雨が降っていて着物が濡れることが気になったが、とてもいい感じがした。東京五輪の知事としては、随分と見栄えのする人で効果的だなと思った。本を読んだあとでは、外国で着物姿で印象づけるという手法は、小池都知事が学生の10代のころからしていた得意な行動だったのかとわかった。だから、あんなにも、みごとだったのだろう。
 また、毎日のようにコロナ問題で記者会見していた都知事の服装や美しいマスクは、かすかな違和感がありながらも、どこかほっとして見ていたものだ。いいところのお嬢さんだったのだなと思い、でも、甲南女子に通っていたようなお嬢さんが、若くはない年齢で、どうしてこんな厳しい仕事を好んでするのだろうかという疑問が常にあった。苦労をしたから日本を変えたいとか、そういうわけでもなさそうだし、何が都知事を動かしているのだろうかという漠然とした疑問があった。

 読後はそんな疑問もふっとんで、複雑な思いが、どんよりと、わだかまる。原則からいえば、この本がすべて事実かどうかもわからないのだが…

 その場その場で、鮮やかなほどの効果的な嘘を重ねて、自らの社会的位置を上へ上へとあげていくさまは、小説を読んでいるようだ。目が大きくて愛くるしいミニスカートをはいた女性の言葉を、そのまま信じ込んでしまう政治家や男性ジャーナリストたちを手玉にとって、都知事まで上り詰めた。利用できる力を持った人間を大事にして、下の立場の人間や利用価値がなくなった相手は、無残に切り捨てる。切り捨てられた人が感じた、いつまでもからみついてくるような小池百合子への不快感はわかる。弱者に冷たく、しかも、それを隠さない。それでいいのか、東京都民の人たち。
 小池百合子の原動力となったのは、復讐心ではないかとこの本を読むと感じられる。いやなことがたくさんあり、それを女性の魔力と嘘の言葉を駆使して、力一杯振り払って生きてきた人なのだろう。東野圭吾の『白夜行』の主人公のような、得体の知れなさを感じる。男尊女卑でうんざりする男性がでてくるのも、小説と同じだ。

 本の最初は、不穏なものが黒々と漂っていて、顔のあざが云々、芦屋令嬢というが違う、父親がひどい、そしてカイロ大学云々、などの部分は、そこまで書き立てることなのかと思いながら読んだが、最後まで読み切ると、真摯に書かれた本なのだとわかる。部分だけを取り上げると、騒ぎすぎではと思われたが、全部を読むと、7月の都知事選挙の行方が非常に心配になる。

 加えて、これは、セルフブランディングの悪い方の例なのだと思い当たる。この7,8年前くらいなのか、フェイスブックなどで人を集めて仕事をする人たちにあったときに、〝セルフブランディング〟という言葉を聞いた。アカウントの顔写真はプロのカメラマンに撮影を依頼し、経歴は嘘でない範囲ぎりぎりのところで、盛りに盛る。初対面の人に、自分の経歴を人の注意をひく言葉選びで話して、相手に興味を抱かせる。そしてSNSでつながって、集客する。見栄えの良さや言葉や態度だけでその人を尊敬し、勉強会などで月に何万円もつぎこむ若い女性などを見て、「だまされているのでは…」と思った。しかし、その人たちは、自分のことをわかってくれる人と出会え、いろいろ学んだということで幸せそうだった。

 小池百合子は、普通の人では罪悪感からできないくらいに自らの経歴を盛って、人はそれを馬鹿のように信じた。「人を言葉で判断してはならない、自分の目で見ていないことを無条件に信じてはならない、自分で確認したことだけで物事を判断しないと間違える」と、人に言われたことがある。でも、人は油断すると、ころっと美談を信じてしまうのだ。

 東京都民はどういう判断をするのだろう。東京都民の友達に読んでほしいと思う。それと、選挙のあとが大事だ。選ばれた人が公約を反故にしていないか、有権者は意識しないと、こんなことが繰り返されるのだ。自分もおおいに反省した。

 それから、表紙は小池百合子の顔写真なのだが、本人に不利益をもたらす本で、著者でもない本人の写真をでかでかと使ってもいいのだろうかという疑問がある。駄目だと思っていたが、写真の所有者ならばいいのだろうか?

 

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by tarukosatoko | 2020-06-23 22:59 | | Comments(0)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


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