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『愛のあるところに神あり』(トルストイ民話集・中村白葉訳) 素朴で素直な親切心を思い出してあたたかな気持ちになる

 
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 一日のすべてを終えて、ベッドで小さなランプをつけてこの本を読んでから寝ると、いい眠りにつける。トルストイが書いた4つの民話が収録されている。

   「人はなんで生きるか」
 家族で一枚しかない、すでにぼろぼろの毛皮裏の外套(がいとう=防寒のための外衣)を着て、新しい外套を買いに出かけた靴を作る男が、外套が買えずに帰る道で裸でふるえている男性に出会う。男は最初は通り過ぎようとするが、善意の心がわいてきて男性を助ける。男性は靴店でいい仕事をする。最終的には、その男性は、地上に落っこちてしまった天使だった。

   「人にはどれほどの土地がいるか」
 「地面さえたくさんあれば、悪魔だって怖いものはない」と百姓が話しているのを聞いた悪魔が、百姓がどんどん土地を手に入れるように仕組む。次から次へと舞い込むチャンスに百姓は欲張りになり…

   「三人の隠者」
 小さい島に住む三人の隠者に、僧正が会いに行く。僧正は、おっとりした隠者たちに祈りの言葉を教えるが、隠者達はなかなか暗記することができない。一日かかって祈りの言葉を指導して、帰途につこうとした船の上で、向こうから隠者達が足を動かしていないのに、すごい速度で海の上を船までやってきた。「祈りの言葉を忘れてしまったので…」と。

  「愛のあるところに神あり」
 妻子を若い頃に失って地下に住む、靴作りを仕事にする男性は、神様に対して不平をいったり、「わたしはもう生きている気もありませんよ」と人に言ったりしていた。「おまえが落胆しているのは、おまえが自分の喜びのために生きようとしているからじゃよ」という人があり、福音書を読むことをすすめられる。男性は福音書を読んで、さまざまに自問自答する。ある日、「明日、往来を見て折れよ、わしが行くから」というキリストの声が聞こえた。半信半疑で、往来を見ていると…。


 笑ってしまうオチがある「三人の隠者」は大好きな話だ。「人にはどれほどの土地がいるか」は、そうとうにブラックな話だ。「人はなんで生きるか」「愛のあるところに神あり」は親切な行いに心があたたまる。


 昭和52年の本。この本がどうして家にあるのか、覚えていない。武者小路実篤が監修していて、ロマン・ロランが〝すいせんのことば〟を書いている。着る服さえ足りない時代、人の親切心がそのまま美しく花開いた時代、信じたことで幸せになった時代。それも幻想かもしれないが、素直な気持ちになって一日を終えることができた。トルストイに感謝する。


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Commented by mo8_a29 at 2020-11-16 21:41
こんばんは!
トルストイの民話集 心が落ち着きそうな話。ブラックなところも含めて。キリスト教徒ではないけれど不変の真理がありそうな気がします。早速 読んでみたくなりました。
私は ロシア文学を少ししか知らないけれどtarukosatokoさんはとても読み込んでいそうですね。
Commented by tarukosatoko at 2020-11-17 22:48
> mo8_a29さん
この本は短編でとても薄いので、すぐに読めますよ。ぜひぜひ読んで下さい。
前向きに生きていくところとか、キリスト教徒でなくても、いいなあと思うし、生きるための力になるのだなと感じました。今がシニカルな時代だからこそ、その良さが身にしみます。一時期、ロシア文学にはまっていたときに、多くないですが読みました。また、読もうかと思いました。
Commented by yoripo at 2020-12-18 12:50
さとこさん!
トルストイ民話民話集読みました。
私が図書館で借りたのは1981年版の「人はなんで生きるか」と2001年版の「イワンのばか」です。
昔のお話の翻訳本ですが、すーっと読めて面白かったです。こんな時代だからでしょうか、ジーンと心に染み入りました。

「イワンのばか」の解説で、「イワンのばかは一面においてロシヤ人の底抜けの正直さ、大きさ、善意の象徴であり憧憬でもあると同時に、トルストイのその人の底抜けの正直さ、大きさ、善意の象徴であり憧憬でもある。国民としても、個人としても、私は、イワンのばか的要素を尊いとも大切とも考える。小りこう性の多いわれら日本人にはとくに、ロシヤ人にように今少しこの要素がほしいと思うのは、はたして私だけだろうか。」という文章にズシーっときました。
(訳者の中村白葉さんの解説でしょうか?)
Commented by yoripo at 2020-12-18 13:11
(長くなってすみません)
「イワンのばか」と「洗礼の子」が今年のNo.1です。くるみ割り人形のアダージョを聴きながら読みました!
昨年の面白かった本No.1は「エデンの東」です。(ビリー・ホリデイを聴きながら読みました!)

話は変わりますが、リトヴィンツェフのMentor Torun Cupの演技を観ましたが、SPは左右で黒・赤に別れている衣装で黒の方の袖口からフリルが出ていたり、いい意味でロシア的なダサさを感じました!
FPの方が髪の毛もサラサラで曲も合っていて、美しい滑り・所作にロシア的な優雅さを感じました!

いよいよ日本選手権が来週になりましたね。海外拠点の選手はほぼ初めての大会で、観る方も緊張しますね~。
無事に大会が開催されますように...。
Commented by tarukosatoko at 2020-12-18 17:09
> yoripoさん
引用しておられるように、「トルストイのその人の底抜けの正直さ、大きさ、善意の象徴であり憧憬でもある。国民としても、個人としても、私は、イワンのばか的要素を尊いとも大切とも考える。小りこう性の多いわれら日本人にはとくに、ロシヤ人にように今少しこの要素がほしいと思うのは、はたして私だけだろうか」に、同意します!
中村白葉さんの翻訳はとてもいいものですね。

きっと10年前だったら、トルストイの作品がここまで心にしみることはなかったかもしれないです。コロナでなにもかもが覆されてしまった今年は特に、心にしみるのかもしれないです。

(続く)(^_-)
Commented by tarukosatoko at 2020-12-18 17:33
> yoripoさん
クリスマスといえば、くるみ割り人形ですね。素直な曲が心にしみるのも、今だからなのでしょうか。今年一番の本は…なんだろう。今はトルストイの『人生論』に進んでいますが、小説のほうがおもしろいですが、人生論は、トルストイとじかに話をしているような感覚になります。
先日、職場に来る大学生に『エデンの東』を「読んでみて」とすすめました。「読めるから」と。「エデンの東」×ビリー・ホリディは独創的で、すごい、読書世界の創造というか…!

リトヴィンツェフのその大会のは、まだ見ていないんですよ。ロシア的なダサさの衣装というのは、味があって…、いいものですね~。顔も一度見たら忘れない癖のある美形です。髪の毛がないと、顔の印象の強さがありすぎて、髪の毛がいい感じに全体を整えている感じがします。

中国杯のエキシビションをみていたんですが、ボーヤン・ジンが真っ白のフリルのブラウスの衣装で、しっとりとしたプログラムを滑っていて、うまくなったのだなあと思いました。最初はジャンプの印象ばかりでしたが、練習したのだなあと。

全日本選手権がいよいよなんですが、感染者が多いなか、開催者はどれだけたいへんかと思われますが、開催して、感染者が一人もでないようにと思います。宇野昌磨選手などは今年になって初めての試合なんですよね。応援したいです。
Commented by matt-philip at 2021-10-08 21:27
「人はなんで生きるか」「2老人」「愛あるところに神あり」の3話がお勧めです。特に「愛ある・・・」は読み終えた後、心に残るものが強く、胸が締め付けられるほどの感動がありました。トルストイの「愛こそが神である」という考えが納得できました。
Commented by tarukosatoko at 2021-10-09 19:36
> matt-philipさん

「愛こそが神である」、この言葉が、特に今は心に響きます。
半年くらい前から、仕事の休日に、元気がなくなった高齢の母親の家に通い、話をしたり家事などをしています。母が生きている間に、母が喜ぶことをできるだけしておこうとしていますが、しんどいなと思うこともあります。
この本のことを思い出して、あたたかい気持ちになれました。
コメント、ありがとうございました!
by tarukosatoko | 2020-11-16 08:06 | | Comments(8)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


by さとこ タルコフスカヤ