『きのう何食べた？』18巻 シロさんたちの世界も禍状態にあるが、仲が良い二人に胸熱

　『きのう何食べた？』（よしながふみ著　講談社）の18巻が出た。今や、シロさんとケンジは、自分の職場の同僚か親戚の人か近所の住人のような親しみを感じる。NHKの朝ドラに2人が共演しているのもツボだ。秋には、テレビドラマと同じ配役で映画にもなるそうだ。楽しみ！
　コロナ禍とは書いていないが、漫画の中も今と連動している。ケンジの美容室が不景気で苦戦していたり、シロさんの事務所でも一部リモートだったり、ベトナムに行っていた店長が帰国したり、志乃さんの実家のレストランも苦戦中だ。シロさんたちが、小日向さんたちと4人で会食する場面でも、心持ち椅子と椅子の距離がひらいているのもソーシャルディスタンスなのか。事務所の大先生との会食や、佳代子さんとの会食でも、飲酒をしていない。ああ…。
　でも、誰一人としてマスクはしていない。マスクをしてしまったら、口元が見えず、登場人物の表情がわからないし、漫画として、厳しい。わたしたちはマスクを常用して、漫画にならないような日常を過ごしているということでもある。
　シロさんが自分の死後にケンジに財産を譲る遺言状の話をする。相続税が圧倒的に安いという理由で、養子縁組も提案する。はあああ、養子縁組はないやろ！「シロさんと親子になりたいわけではない！」とケンジが反論。もしも、同性婚が認められたときに、養子縁組していたら結婚できないというルールもあるらしい。知らなかった。　「たとえ死ぬときに二人が別れていても、財産はケンジに」と心でつぶやくシロさんの深い思いに、じーんとする。めちゃくちゃジーンとする。二人は50代、シロさんはあと数年で60才、びっくりする。こんな漫画ってあるだろうか。読者と一緒に年をとっていってくれる漫画…。
　あと、びっくりしたのは、二人の寝室が初めてでてきた。これまでかたくなに描かれることがなかった寝室が。思わずじーーーーっと見てしまった。シングルベッドを二つ並べて寝ているのかー。　それから、『ケンジとシロさん』というよしながふみの番外編の漫画をネットで販売していることを知った。6巻以上出ていて、1巻から3巻くらいまでは、もう売っていないようだ。その購入ページに進むためには「あなたは成人ですか？」という問いに「はい」と答えないとならない。成人指定の本なのだ…。まだ買っていない。
　二人の幸せそうな様子には、こちらもしみじみとする。人と話していたのだが、これが男女だったらこうはいかないだろうと。ケンジは女性の心を持った男性で、遺伝上は男性だ。だから、女性の精神面の、きれいな、いいところだけを持っていて、女性特有のホルモン作用から来るような、いやあな部分がないから、いいのではないかと。女性ならではのネチネチしたところとか、女性ならではの微妙な嫉妬深さや背後に迫ってくるような独占欲や…うまくいえないが。男子の幼児はシンプルにかわいくて、女子は幼児でもすでに意地悪な姑のような批判的な目を持っている…みたいな話に通じる。もちろん、女性でもシンプルなかわいい人はいるし、男性の嫉妬もいやなものだが。　とにかく、ケンジの天使のような性格が18巻でも際立っていた。やっと貯金するようになったようだし。