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『仄暗い水の底から』(鈴木光司) 〝じめじめした日本のホラー〟名作だった


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 日本のホラーは、欧米ホラーと肌触りが違っていると、知り合いの大学生が言う。大学生は日本のホラーが好きだと。
「日本のじめじめしたホラーが好き」と。
「じめじめしてるホラーって?」

 ということで勧められた日本のホラーの、短編集。短編が7篇、読み進むうちに、満足感に変わる。

プロローグ 観音崎を散歩する祖母と孫

浮遊する水 引っ越してきた母と娘がマンションの屋上で赤い幼児用のバッグを見つける。それから不気味なことが起こる

孤島 立ち入り禁止の孤島、友人が、新興宗教に入信している女性をそこに「捨てた」と話していた。その孤島に別件で上陸できることになり、孤島に現れたのは…

穴ぐら アナゴ漁師は急にいなくなった妻をさがしていた。漁師には、おとなしい息子、認知症の父、失語症の娘がいた。漁師は自分の船のいけすにたどり着き、いけすに落ちてしまい…

夢の島クルーズ 同窓会で会った友人とその妻にさそわれて、東京湾クルーズにでかける。船上でマルチ商法の仕事に誘われうんざりしていると、急にヨットが走行不能になる。日が沈み暗くなり…

漂流船 マグロ漁船が帰港途中に無人の小型クルーザーを発見する。クルーザーに乗り込んで持ち主の航行日誌を読んでいるうちに、無人になった原因がこれではとわかるのだが…

ウォーター・カラー 芝浦運河のビルにある劇団の公演、音響係の男性は、天井から水滴が落ちていることに気がつき、上の階に水をとめに行くが…

海に沈む森 冒険が趣味の男性が友人と鍾乳洞を発見するが、閉じ込められてしまい、脱出を試みる…

エピローグ 観音崎を散歩する女性の独白。短編とつながる話。


 「浮遊する水」は映画化されて、知り合いの大学生によると、思い出しては何度でもぞっとする映画になっているそうだ。小説もぞっとする。水がかかわってくるので、皮膚感覚がリアルでぞっとする。映画はさぞ怖いことだろう。
 
 たぶん、「浮遊する水」が最高に怖くて気持ちが悪い。続く話は、気持ちが悪いのだが、からみついてくるような気持ち悪さではなくて、「えええっ」と意表を突く話で、想像を超えた話の進み方に驚く。「ウォーター・カラー」は水を止めようとする場面の意外さに頭が空白になるし、「海に沈む森」は最後に胸があつくなるほどだ。

 大学生がいう「じめじめしたホラー」とは。この本は東京湾周辺にまつわる水をテーマにした連作だった。海に囲まれた日本特有の湿度が物語に満ち満ちているということだろうかと。

 鈴木光司といえば、「リング」「らせん」「貞子」の人だ。アメリカでは〝日本のスティーブン・キング〟と言われたこともあるそうだ。読もうかな…



by tarukosatoko | 2025-09-17 22:20 | | Comments(0)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


by さとこ タルコフスカヤ