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『名探偵のままでいて』(小西マサテル) 認知症も「病識の有無」が大事、知ると本人も楽になる

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 安楽椅子探偵ミステリー‼ というジャンルがあることを知る。現場にいかず能動的に情報を収集もせず、室内にいたままで訪れてくる人や記事などの情報だけで事件を推理する探偵もの。知り合いの大学生のお勧め本。この大学生、ありがたい読書ナビ的存在で、縁が薄かったミステリーの世界にすいーっと入っている昨今だ。

 小学校教師の楓には、レヴィ小体認知症を患っている祖父がいる。祖父は住み慣れた本棚にかこまれた部屋で、ヘルパーさんや療法士などのお世話になりながら、暮らしている。両親を失い身内が祖父だけの楓は、日々、祖父の家に通っている。祖父が行きつけだった飲食店や、学校などで起こった事件を、楓が祖父に話して、たくさんの会話ののち、祖父が筋の通った推理を展開する。おー、おみごと。情報量は読者も祖父と同じ条件なので、あー、気がつかなかったよーーーーー、などと、楽しむことができる。

 あ、この楽しさって、中国時代劇ドラマに酷似しているやんかーーーーーーー。とんでもない事件が起こるのだが、それを予兆した賢いお方があらかじめ手を打ってあり、事件をどんでんがえしにするという。中国ドラマも怖いが、『名探偵のままでいて』も同じく、怖いどんでんがえしが。

 ミステリーのタイプは、日常の謎、広義の密室殺人、人間消失。それぞれを祖父が推理する。あー、おもしろい。小説の最後は、楓が「好きな人ができた」と、誰を好きかは断言せずに終わるという、ミステリー仕立て。やっぱり、先生のほうかな‼と推理?!するのもうれしい終わり方だ。


 この小説は、古典ミステリーナビにもなっている。小説で出てくる名作を覚え書き。

ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』(これは読書ナビ大学生のお勧めで既読)、
ロバート・F・ヤング『タンポポ娘』
ウイリアム・アイリッシュ『幻の女』
ジェイコブズ『猿の手』
ディクスン・カー『四つの凶器』
ヒラリー・ウォー『事件当日は雨』
あと、萩尾望都『11人いる』
ポオ『モルグ街の殺人』

 ところで、小説の祖父はレヴィ小体認知症だ。認知症がこんなにうまくいくだろかと思うが、著者の小西マサテルさんのお父様は、レヴィ小体認知症だったそうで、その経験が土台になっている。瀧井朝世さんの解説を読んで、目からうろこ、すごくわかったことがある。認知症では「病識の有無」が大事なのだそうだ。「自分が認知症という病気になっている」と理解すると、本人も楽になる、と。小西さんのお父様はわかっていたので、幻視があったら日記に「無視」すると何度も書いていたそうだ。
 わたしの母も認知症をわずらっていて、そのことについて話したことがないが、母も、わかっているようなので、うまく切り出せるときに話すと、母もすごく楽になると思う。思い出すと、何度か、「うまくわからなくなるのよ」と話していたことがあった。今も時々そんなふうに話しているので、そのとき、話したら、母ももっと楽になるかもしれない。さっそく、面会に行ったときに、機会を伺おうと思う。

 


by tarukosatoko | 2025-10-25 11:57 | | Comments(0)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


by さとこ タルコフスカヤ