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『珍妃の井戸』(浅田次郎)  藪の中…、「アホなふりをする」ことの防御力 & 中国ドラマ『天啓異聞録』


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 『蒼穹の昴』全4巻の続編。光緒帝には3人の妃がいたが、その一人、珍妃だけを光緒帝は寵愛していた。珍妃は西太后ににらまれて冷宮にうつされて、冷遇されて暮らしていたが、義和団事変に際して、西太后の命により、24歳で、井戸に投げ込まれて死亡した。

 -という史実になっているが、本当は誰が珍妃を殺したのか、それをイギリス、ドイツ、ロシア、日本から事変後の調査で中国に入国した貴族達が調べるという話。中国で長く仕事をしている記者→皇帝の側近の宦官→評判が悪い将軍→寵愛されなかった妃(珍妃の姉妹)→妃の側近→父親が義和団の指導者だったため追放された短期間だけの元皇太子→もう一人の外国かぶれの皇族→光緒帝と証言を聞いて回るが、全員、話の内容が違う。犯人も、違う。ちょうど、芥川龍之介の小説『藪の中』のような、皆さん、お話がお上手なので、どのお話も信憑性があるようで、わからなくなる…。

 光緒帝の話は、列強が中国の民を蹂躙したことの比喩かと思ったが、そうだろうか。しかし、いつ暗殺されてもおかしくない重要人物である光緒帝は、最初は気がふれたふりをしている。ドラマでよくでてくる気が狂ってしまったお殿様、あれは重要な護身術の一つなのだなと。ずっと前、堺雅人の天皇のような人もしていたな。外国かぶれの脳天気な皇族も、実は意識がクリアで、めっちゃ考えて動いていることが最後にわかった。最近見た中国ドラマ『天啓異聞禄』でも、悪のグループの手先が、ずっと何もわからない痴れ者を演じて、事件を解明しようとする役人であるホアン・シュエンにつきまとっていたので、捜査内容が筒抜けだった…。「アホなふりをする」という技は強い防御力を持つんだな。

(ちなみに、天啓異聞録は、辺境の街とその島で起こったエイリアンみたいな怪獣とそれを操る人達がでてきて村人を支配するという、『エイリアン』と『パイレーツ・オブ・カリビアン』的要素もあるごちゃまぜなドラマだった。まぜまぜすぎるやろ~~~~~と思いながら見た。結局、海の底に悪の本元があって…、海水と雪と氷と岩と、映像が一貫して肌寒いドラマだった)

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(↑天啓異聞録)






 あと、冷宮は寵愛を失った妃などがうつされる場所で、冷暖房が極端に乏しく、風通しの悪い住居で、冬は凍った食べ物、夏は腐りかけたり、腐った食べ物を食べて暮らすそうで、それを知ると、冷宮暮らしのきつさが身にしみる。


 ところで、小説の中で、中国の登場人物は列強の暴力を激しく断罪している。同じ人間ではなくて猿のように思われて、国土が強い国々に切り裂かれ、大事なものを破壊され、破壊され、破壊され。問題の南京大虐殺を思い出した。そりゃあ、根に持つわ。生涯忘れないし、子供や孫にも、こんなことがあったから、気をつけようと話すと思う。愛国心が強まると思う。

 ただ、中国は同国人にもひどいのだ。どんな理由であれ、妃を井戸に落として殺すとは。棒でたたき殺したり。周りの人はそのことに激しく心をいためているから、特権階級だけがひどかったのか。お妃間の陰謀や、世継ぎ争いで他の男子を殺すとか。あ、これは『オスマン帝国外伝』でもあった。『チャングムの誓い』の禍の元はそこにあったし。
 いやいや、日本はどうだったか、知らない…。歴史に興味を持たずにいたので、歴史を知らない。勉強や映画や本はもちろん、大河ドラマすら避けてきたし。だから、何も知らないことに、はたと気がつく。続編を読んだら、何か、見えてくるものがあるのだろうか。読むけど。








Commented by pohcho at 2026-01-17 16:19
さとこさん、こんにちは~。
「堺正人の天皇のような人」というのは、もしかして大河ドラマ「篤姫」の将軍家定ではないですか?もし違ってたらごめんなさい。
わたし、中国語を昔勉強していて「西太后の紫禁城」は観てました。今はすっかり遠ざかってしまいましたが、さとこさんはいろんな言語をずっと勉強されていてすごいですね。
「蒼穹の昴」のシリーズは最初はめちゃくちゃ面白ったのに、
だんだん勢いがなくなって「天子蒙塵」なんてひたすらどんよりしていた気がします。確か、そろそろ完結編が出るということだったので、また読み返してみようかしら?さとこさんの感想も楽しみにしています。
そして、来月のオリンピックも楽しみですね!
Commented by tarukosatoko at 2026-01-17 18:24
> pohchoさん、
こんにちは~~。そうです、篤姫の将軍(天皇の側ではなかったです~)のあの人です、あのときも、びっくりしましたよ。将軍の目が一瞬、きらっと知性的に光ったところは、みごとでした。

中国語をされていたのですね。中国語、響きとか、いろいろ、いいですよね。
ロシア語はアルファベットがなじみやすかったですが、名詞も動詞も男性女性で違うとか、変化が多すぎて断念。タイ語は文字が覚えられず、発音の違いがわからなかったりで語彙が増えず、ロシア語よりも断念。そして、中国語は学生のときに2年間したことがあったり、文字がわかりやすかったり、ピンインの読み方を少し知っていたりで、続いています。いちおう、タイ語は、超細々と続いています。

「西太后の紫禁城」、題名だけで震え上がるような題名ですね。蒼穹の昴を読んで「西太后→怖い」が頭にたたき込まれたような。西太后の周りの人達、いいこともあれば理不尽もあり、たいへんだったでしょうね~~~~~~。本当に、「蒼穹の昴」の疾走感、鮮やかな記述はすごいですね‼今度は「中原の虹」に突入します。今年、完結するそうですね。それもあわせるとあと11冊あるので、つまらなかったからといってやめるのもなあとか、他の違う本が読めないとか、ささいなことを思っていますよ…
pohchoさん、読み返すことがありましたら、感想を楽しみにしています‼
by tarukosatoko | 2026-01-17 15:27 | | Comments(2)

本をぺらぺら読むのが一番の幸せ。フィギュアスケートやタイ・中国などのアジアドラア、生活雑記もあり。


by さとこ タルコフスカヤ